「内部告発で30年閑職-会社に1356万円賠償命令・富山地裁」(2005・2・25日付朝刊の対社面の見出し)
運輸業界の違法カルテルを内部告発した富山県高岡市の串岡弘昭さん(58)が、30年にもわたって勤務先の「トナミ運輸」(高岡市)に「草むしり」をさせられ続けていたという話を知り、大変不快な気分にさせられた。
富山地裁の永野圧彦裁判長が「原告の内部告発は正当で法的保護に値する。会社は報復として不利益な扱いをした」と認定し、時効分を除き、慰謝料200万円を含む約1356万円の支払いをトナミ運輸に命じる判決を下した。
「窓際」に追いやられて屈辱に耐えながら、30年間も「草むしり」を続けた串岡さんの「強靱な精神力」には、驚かされるとともに、敬服させられる。トナミ運輸は、「控訴することも検討しております」とコメントしているけれど、これ以上、恥を世間に晒さない方が、会社のためである。「人権無視の会社」として社会的信用をさらに損なう。 実は、今回のこの判決をテレビのニュースで聞いたとき、似たような話を思い出していた。
もうかれこれ20年も前のことになるけれど私の高校(東京工業大学理工学部付属工業高等学校工業化学課程)のクラスメートのN君が、勤務先の超有名化粧品会社である「S社」から「閑職」を与えられ、10年以上にもわたって闘争していた話である。
N君は、S社に入社以来、研究所に配置され化粧品の開発に取り組んでいた。あるとき、S社が製造した化粧品を買って使用した消費者がいわゆる「薬害」にあったとして、S社を相手取り民事裁判を提起した。この裁判で会社側の証人として出廷を命じられたS君が「良心に従って・・」と宣誓したうえで述べた証言内容にS社にとって不利になる部分があったのか、証言後、N君は、突如、研究所の一室に配置転換された。その部屋での仕事は、「本を読むこと」だった。毎日その部屋に独りで出勤し、本を読む。どんな本でもよい。マンガでもよい。見張り役が一日中、N君を見張り、勤務時間中、うっかりウトウトと居眠りしそうなにると、見張りから「しっかり仕事しろ」と厳しい叱責の声が浴びせられる。部屋に電話が設置してあるが、盗聴されている気配を感じていると言っていた。社外に電話てきるのは、休み時間のときだけで、公衆電話を使う。
こうした「閑職」に配置されていながら、S社は、不当労働行為にならないように「定期昇給」させ、この嫌がらせにN君が耐え兼ねて自主的に退社するのを待っているようだった。S社もしたたかである。これに対して、N君は、「こんなことで会社に負けてたまるか」とトコトン戦う決意を語っていた。
N君の母親は、「正田家」の一族で、高校時代、「美智子さんが皇太子と結婚したとき、お母さんは、披露宴に招待された」とクラスメートに自慢していたのを思い出す。
S社は、社長以下、いわゆる「メセナ活動」にも熱心に取り組み、社会貢献では定評のある会社の一つとして有名である。表面とは違い、会社の内部では、「人権侵害的な行為」が平然と行われていた。この話をいつか記事にしようと思いつつ、その機会を逸してしまった。内部告発のように表沙汰にすれば、N君がさらに傷つくばかりか、さらにS社からイジメられるのではないかと心配したからである。
日本国憲法が「基本的人権尊重」(第10条~40条)を掲げ、世界の中で相当に進歩しているはずのこの資本主義国の日本で、相変わらず陰湿な「人権侵害」が行われている。それも「社会貢献」をブランド・イメージにしている大企業がこの有り様であるから、情ない気持ちにもなる。
その後、N君とは連絡しようと思いつつも、一度も連絡していない。串岡さんの勝訴判決のニュースを聞きながら、「いまどうしているだろうか」と、気になっている。
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運輸業界の違法カルテルを内部告発した富山県高岡市の串岡弘昭さん(58)が、30年にもわたって勤務先の「トナミ運輸」(高岡市)に「草むしり」をさせられ続けていたという話を知り、大変不快な気分にさせられた。
富山地裁の永野圧彦裁判長が「原告の内部告発は正当で法的保護に値する。会社は報復として不利益な扱いをした」と認定し、時効分を除き、慰謝料200万円を含む約1356万円の支払いをトナミ運輸に命じる判決を下した。
「窓際」に追いやられて屈辱に耐えながら、30年間も「草むしり」を続けた串岡さんの「強靱な精神力」には、驚かされるとともに、敬服させられる。トナミ運輸は、「控訴することも検討しております」とコメントしているけれど、これ以上、恥を世間に晒さない方が、会社のためである。「人権無視の会社」として社会的信用をさらに損なう。 実は、今回のこの判決をテレビのニュースで聞いたとき、似たような話を思い出していた。
もうかれこれ20年も前のことになるけれど私の高校(東京工業大学理工学部付属工業高等学校工業化学課程)のクラスメートのN君が、勤務先の超有名化粧品会社である「S社」から「閑職」を与えられ、10年以上にもわたって闘争していた話である。
N君は、S社に入社以来、研究所に配置され化粧品の開発に取り組んでいた。あるとき、S社が製造した化粧品を買って使用した消費者がいわゆる「薬害」にあったとして、S社を相手取り民事裁判を提起した。この裁判で会社側の証人として出廷を命じられたS君が「良心に従って・・」と宣誓したうえで述べた証言内容にS社にとって不利になる部分があったのか、証言後、N君は、突如、研究所の一室に配置転換された。その部屋での仕事は、「本を読むこと」だった。毎日その部屋に独りで出勤し、本を読む。どんな本でもよい。マンガでもよい。見張り役が一日中、N君を見張り、勤務時間中、うっかりウトウトと居眠りしそうなにると、見張りから「しっかり仕事しろ」と厳しい叱責の声が浴びせられる。部屋に電話が設置してあるが、盗聴されている気配を感じていると言っていた。社外に電話てきるのは、休み時間のときだけで、公衆電話を使う。
こうした「閑職」に配置されていながら、S社は、不当労働行為にならないように「定期昇給」させ、この嫌がらせにN君が耐え兼ねて自主的に退社するのを待っているようだった。S社もしたたかである。これに対して、N君は、「こんなことで会社に負けてたまるか」とトコトン戦う決意を語っていた。
N君の母親は、「正田家」の一族で、高校時代、「美智子さんが皇太子と結婚したとき、お母さんは、披露宴に招待された」とクラスメートに自慢していたのを思い出す。
S社は、社長以下、いわゆる「メセナ活動」にも熱心に取り組み、社会貢献では定評のある会社の一つとして有名である。表面とは違い、会社の内部では、「人権侵害的な行為」が平然と行われていた。この話をいつか記事にしようと思いつつ、その機会を逸してしまった。内部告発のように表沙汰にすれば、N君がさらに傷つくばかりか、さらにS社からイジメられるのではないかと心配したからである。
日本国憲法が「基本的人権尊重」(第10条~40条)を掲げ、世界の中で相当に進歩しているはずのこの資本主義国の日本で、相変わらず陰湿な「人権侵害」が行われている。それも「社会貢献」をブランド・イメージにしている大企業がこの有り様であるから、情ない気持ちにもなる。
その後、N君とは連絡しようと思いつつも、一度も連絡していない。串岡さんの勝訴判決のニュースを聞きながら、「いまどうしているだろうか」と、気になっている。
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