この国には、精神障がい者本人の同意なく、精神科病院に強制入院させる制度として、自傷他害の恐れのある場合に都道府県知事らの権限で行なわれる「措置入院」だけでなく、家族らの同意さえ得れば精神科病院の医師が行なうことができる「医療保護入院」という制度があります。「医療保護入院」はこの国の精神科の入院患者の実に半数近くを占めており、国際的にも人権侵害との批判がずっとなされてきたものです。
この「医療保護入院」制度について、厚労省は、3月中旬の有識者検討会に示した資料では、「基本的には将来的な廃止も視野に、縮小に向け検討」とし、しかもその時点では、この厚労省案に強い反対意見も出なかったにもかかわらず、4月15日には、「将来的な継続を前提とせず、縮減に向け検討」と修正、「将来的な廃止」の文言を削除したとのことです(東京新聞2022.04.17)。日本精神科病院協会(日精協)の委員が反発したことなどが要因ではないかと同紙は伝えています――この間3月末の検討会で、日精協の委員が「医療保護入院が廃止されれば、治療の放棄につながりかねない」と反対したというのです。
相も変わらぬ日本の精神医療のタテマエとホンネの矛盾がまたしても露呈し、いやそれどころかホンネの側に強く舵を切り始めた証しです。