映画日記(ためし)

映画の印象を、悪い、ふつう、よい、の三段階で表現したいと思います。
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『閉じる日』

2008年02月28日 | Weblog
よい

行定勲 監督
冨樫真、沢木哲、綾花、永瀬正敏、藤田アサミ、野村貴志、筒井真理子、大鷹明良 、大野麻那、藤原康太、田中要次 出演

期待の6人の監督たちが全編デジタル・ビデオで撮りあげた《ラブシネマ》の第3弾。母の変死、父の失跡と囁かれ、両親亡き後ふたりっきりで暮らしてきた作家、我妻名雪と、高校生の拓海。ふたりは近親相姦の関係にある姉と弟。“ある過去”がふたりを強く、深く結び付け続けていた。過去であると同時に、その拭い去れない現実から逃れようと、名雪は長い間封じられてきた体験を赤裸々に小説に綴る。現実に絶望し、孤独に逃げて安堵する弟。そこへ、そんな彼を一途に愛する少女が現れる……。

この評価はほとんど物語のおもしろさに対するものである(笑)。
なぜ粒子の粗い、ソフトフォーカスで一貫して撮っているのかという疑問は最後まで観て理解することができたが、演技のつたなさ(特に綾花の)は否定できない。

ひどい恋愛、いやひどい状況下での恋愛というべきか。
以下ネタバレ









けっして恋愛に悩んでいるときにおすすめできる作品ではないし、純粋な人は設定だけで許せないだろうが(それを踏まえてのあのエンディングであろう)、話し好きの人には一見の価値アリ。

できれば、高校生どうしの恋愛よりも姉弟の関係をもう少し描いてほしかった。

『イカとクジラ』

2008年02月28日 | Weblog
よい

ノア・バームバック 監督
ジェフ・ダニエルズ、ローラ・リニー、ジェシー・アイゼンバーグ、 オーウェン・クライン、ウィリアム・ボールドウィン、アンナ・パキン、ヘイリー・ファイファー、ケン・レオン 出演

ブルックリン、パークスロープに住むバークマン家。父は元売れっ子作家だが、今は大学講師、母は「ニューヨーカー」誌でのデビューを控えた有望な新人作家だ。文学を奨める父親の期待を尻目に、12歳のフランクはテニスに、16歳のウォルトは、ロックに夢中だった。ある日、両親の離婚が告げられた。

現代の家族問題を濃密にかつ、コミカルに描いた佳作。
そして現代の問題であるがゆえに、ほとんど救いというか解決策がないままにおわってしまう。
生き方はかっこいいが生活力のない作家である父親(ありがち)と、その父親に影響されて作家として成功しつつあるが浮気が激しくその作品をパートナー(父親)には認められない母親(ありがち)。
その生活と性格の影響か、離婚の影響か、ふたりの子どもたちにもダークサイドな部分が出現してしまう(ありがち)。

それらのありがちなシチュエーションを非凡にテンポよく描く。
音楽やさりげない風景描写もよい。

『電送人間』

2008年02月22日 | Weblog
よい

福田純 監督
鶴田浩二、平田昭彦、白川由美、中丸忠雄、河津清三郎、田島義文、土屋嘉男、佐々木孝丸、天本英世、村上冬樹、堺左千夫 出演

一人の男が銃剣で刺殺されるという事件が起こった。犯人を追いつめたものの、男の姿は密室から忽然と消えうせていた。事件を追う桐岡記者は、物質転送を研究する仁木博士が、犠牲者と犯人・須藤を繋ぐカギであることを知る。犠牲者を含む大西たちは、14年前、須藤と仁木博士を生き埋めにしていたのだった……。

1960年作。通称“東宝変身人間シリーズ”第二作(『美女と液体人間』が第一作。1954年の『透明人間』を第一作とする説もあり、その場合本作は第三作となる)。

鶴田浩二が出ているだけで、「いつもと違う」と感じさせる(笑)。
白川由美の存在理由や、浅間山が爆発する必要性がよくわからないなどのあまい部分もけっこうあるが、きびきびと話が進みおもしろい。
前半でキャバレーが出てきて「またぁ?」と思わせたが、そのあとからよくなった。

『薬指の標本』

2008年02月17日 | Weblog
ふつう

ディアーヌ・ベルトラン 監督
オルガ・キュリレンコ、マルク・バルベ、スタイプ・エルツェッグ、エディット・スコブ、ハンス・ジシュラー、ソティギ・クヤテ 出演

若さと無防備な空気を持つ21歳のイリスは、ある日、働いている工場の事故で、薬指の先端を失ってしまう。その事故がきっかけとなり、イリスは仕事を辞めて近隣の港町へ引越した。やがてイリスは、"人々が永遠に遠ざけたいと思う品々"が持ち込まれる標本室で働くことになった。間もなく、イリスと標本製作士との間に特別な関係が生まれ、イリスは彼から一足の靴をプレゼントされるのだが…。

フェティシズムがからんだファンタジー。

設定がむかし読んだリチャード・ブローティガンと似ている気がする。

音楽・音響がとてもすばらしく、映像も美しい。
前半はおもしろく進んでいくのだが、後半、造船所の人とのとってつけたような別れや、エンディングは消化不良。

以下ネタバレ。








靴を落として技師の部屋にはいっていくのがおかしい。部屋にはいるのであれば、靴をはいているか、せめて靴を持っていくべきだろう。

『美女と液体人間』

2008年02月16日 | Weblog
ふつう

本多猪四郎 監督
佐原健二、白川由美、平田昭彦、土屋嘉男、千田是也、田島義文、夏木陽介、佐藤允 出演

一人の男が消失するという事件が発生した。捜査を担当した富永刑事は、友人の科学者・政田から、大量の放射能を浴びることで人間が液体化するということを聞かされる。やがて一連の犯行は、原爆実験の巻き添えで液化した人間、液体人間の仕業であることが判明する。大都会を徘徊する異形の殺人者に対し、捜査陣は政田の協力を得、ついに下水道へと追いつめるが……。

1958年作。通称“東宝変身人間シリーズ”第一作(1954年の『透明人間』を第一作とする説もあり、その場合本作は第二作となる)。

幸か不幸か、このシリーズの第三作『ガス人間第一号』をおおむかしに自主上映で映画館で観ていてしまったために、期待が大きすぎた。

大人向けの内容に反核と基本が地味なのだが、それらと液体人間という設定と後半がどうもマッチしない。地味なのはスタッフも承知だったようで、その埋め合わせにキャバレーでの歌や踊りのシーンがかなり多く挿入されている。

『ストーン・カウンシル』

2008年02月13日 | Weblog
ふつう

ギョーム・ニクルー 監督
モニカ・ベルッチ、カトリーヌ・ドヌーヴ、モーリッツ・ブライブトロイ、サミ・ブアジラ、エルザ・ジルベルスタイン、ニコラ・タウ、ロレンツォ・バルドゥッチ、エリック・カラヴァカ 出演

ローラは、養子としてモンゴルから連れ帰った息子のリウ=サンと共に、パリで暮らしていた。リウ=サンの7歳の誕生日が近づいた頃、その身体に不思議な形のアザが現れる。そしてそれをきっかけに、母子の周囲で奇妙な現象が起きはじめた。幻覚の中でローラを襲う、不気味な蛇や鷲。悪夢に襲われたリウ=サンは、聞いたこともない言語を口走る。そしてある日、ローラの運転する車が事故を起こし、リウ=サンは昏睡状態に陥ってしまう。苦悩するローラは、謎を解明すべく調査をはじめるが、彼女を包む闇はさらにその深さを増していった…。

ポイントがないサスペンス。
恐怖を感じさせるところがほとんどない。唯一、敵の巨大さを感じさせるところが怖さのツボなのだが、それも強調がへたくそで観ているものに伝わってこない。知らない間に敵に取り囲まれているという恐怖を、十分には出しきっていない。

序盤、エレベーターのところで話しかけてくる女性が素人くさい。

後半モニカ・ベルッチのヌードシーンがあるが、遅すぎた(笑)。

『あしたの私のつくり方』

2008年02月11日 | Weblog
ふつう

市川準 監督
成海璃子、前田敦子、高岡蒼甫、近藤芳正、奥貫薫、田口トモロヲ、石原真理子、石原良純 出演

日南子(かなこ)は、かつてはクラスの人気者だったが、ある日突然いじめられる存在になってしまう。寿梨(じゅり)は、小学校の卒業式の日に日南子と交わした言葉が忘れられない。「本当の自分」と「偽物の自分」。共感し合いながらも、それ以来疎遠になる二人。やがて高校に進んだ寿梨は、噂で日南子が引っ越したと聞き、突然彼女にメールしようと思いたつ。寿梨はコトリと名乗り、「ヒナとコトリの物語」をメールに綴り始める。

おもしろそうな題材だと思うのだが、どうもNTTグループのCMにしか見えず金を出してまで見るようなものではなさそうだ。

成海璃子と前田敦子が小学生から高校生まで演じているのはすごい。

『テラビシアにかける橋』

2008年02月10日 | Weblog
よい

ガボア・クスポ 監督
ジョシュ・ハッチャーソン、アンナソフィア・ロブ、ズーイー・デシャネル、ロバート・パトリック、ベイリー・マディソン、ケイト・バトラー、デヴォン・ウッド、エマ・フェントン、グレイス・ブラニガン、レイサム・ゲインズ、ジュディ・マッキントッシュ 出演

貧しい家庭にあって姉妹4人に囲まれ窮屈に暮らす11歳の少年ジェスの唯一の慰めは、こっそりと絵を描くことだった。学校でも居心地の悪さは同じだったが、ある日、風変わりな女の子レスリーが転入してきてジェスの灰色の毎日は一変する。自由な発想と行動力を持つレスリーのリードで、2人は森の中に空想の王国テラビシアを創り出し、かけがえのない友情を育んで行く。

ネタバレはしないが、このストーリー構成は気に入らない。
しかし、それでも涙ちょちょぎれたし、爽快感もあるし、おもしろかった。

転校生のアンナソフィア・ロブと妹のベイリー・マディソンがすばらしい。
また、音楽の先生のズーイー・デシャネルがかっこいい。あんな音楽の授業であれば、誰もが音楽を好きになる。

子どものころに、夢想・想像・妄想が好きだった人にはおすすめ。

『ザ・スナイパー』

2008年02月10日 | Weblog
よい

ブルース・ベレスフォード 監督
モーガン・フリーマン、ジョン・キューザック、ジェイミー・アンダーソン、アリス・クリーグ、ミーガン・ドッズ、コーリイ・ジョンソン、ジョナサン・ハイド、ビル・スミトロヴィッチ、アンソニー・ウォーレン、ネッド・ベラミー、トーマス・ロックヤー 出演

レイは元警官の体育教師。不良息子と絆を深めようと、森へキャンプに出かけたところ、FBIから逃れようとするプロの暗殺者カーデンを見つける。正義感からレイはカーデンを連行するが、彼の仲間の殺し屋たちが追いかけてくる。彼らはある重要人物の暗殺を任命されていたのだ。レイは、カーデンとの会話から、その暗殺ターゲットがわかるが-。果たしてレイたちは無事、逃げ切れるのか?!

原題は『THE CONTRACT』。
途中で予算を削られたような印象の作品。

しかし、出演者はいいし、話もおもしろい。
親子の関係、追うものと追われるもの、それらの会話のはしばしに笑いの要素が入れられて(脚本 ステファン・カッツ/ジョン・ダルーゼット)、長さもちょうどよい(96分)。

モーガン・フリーマンがアパートを借りたところと、追跡者のコンピューター(チェス)のところが、もうすこしなにかあったのではないかと(つまり、なにかの伏線だったのではないかと)思わせる。

『ラスト、コーション』

2008年02月05日 | Weblog
ふつう

アン・リー 監督
トニー・レオン、タン・ウェイ、ワン・リーホン、ジョアン・チェン、トゥオ・ツォンホァ、チュウ・チーイン、チン・ガーロウ、クー・ユールン、ガオ・インシュアン、ジョンソン・イェン 出演

日本軍占領下の1942年の上海。傀儡政府のスパイのトップであるイーは、かつて香港で出会った女性ワンと再会する。数年前、香港大学の学生だったワンは、抗日に燃える演劇仲間たちとイーの暗殺計画に加わっていた。その時、イーが突然上海に帰ったことで計画は流れたが、レジスタンス活動を行う組織は、上海に戻っていたワンに再びイーの暗殺計画への協力を求める。ワンはイーに近づき、彼の愛人になることに成功。やがて二人は……。

歴史ものの威を借る恋愛もの。

lustを辞書で引くと、
1 (…への)性欲, 肉欲, 情欲((for, of ...));《聖・神》欲, 煩悩
2 (権勢などへの)渇望, 切望((for, after ...))
とある。

ついでにcautionを引くと、
1 [U]注意, 用心, 警戒, 慎重さ
2 [U][C]((英))(公式の)警告, 戒告. ▼warningより弱い
3 ((通例a ~))((米南部))((古風))びっくり[楽しく, 不安に]させるような人[物], 風変わりな人[物], 注意人物.
とある。

ともに1の意味でいいと思うが、情欲も警戒もたいしたものではない。

感心したのは、主人公ふたりの最初のベッドシーン。
乱暴にチャイナドレスを引き裂き、ベッドに押し倒す。おもむろにベルトをはずし、女を後ろ手に縛る。が、すぐに解き放つのだ。
つまりこれは、男の趣味を表しているのではなく(笑)、男がズボンとパンツをおろすというスキのできる時間を防御したということなのだ。ここは男の警戒がよく出ている。

ママゴトの学生抗日運動のシーンをもう少し短くすれば、印象はもっとよくなっただろう。

撮影・美術はよい。

この監督の作品をいくつか観たが、どうも好みに合わないようである。

『アメリカン・ギャングスター』

2008年02月02日 | Weblog
よい

リドリー・スコット 監督
デンゼル・ワシントン、ラッセル・クロウ、キウェテル・イジョフォー、キューバ・グッディング・Jr、ジョシュ・ブローリン、テッド・レヴィン、アーマンド・アサンテ、ジョン・オーティス、ジョン・ホークス、カーラ・グギーノ、RZA、ルビー・ディー、コモン、ライマリ・ナダル、ロジャー・グーンヴァー・スミス、マルコム・グッドウィン、ユル・ヴァスケス、リッチー・コスター、ワーナー・ミラー、アルバート・ジョーンズ、J・カイル・マンゼイ、ティップ・ハリス、ジョン・ポリト、ケイディー・ストリックランド、ロジャー・バート、リック・ヤン 出演

1970年代初期のニューヨーク。ハーレムを仕切るギャングのボスに15年間仕えてきた運転手のフランク・ルーカスは、ボス亡き後、誰かに使われる人生から抜け出すことを誓い、一匹狼として生きることを決意。ベトナム戦争の軍用機を利用して東南アジアの麻薬を密輸する計画を思いつき、大胆な行動力を発揮してそれを実行に移し、麻薬の新しいビジネス・モデルを築き上げることで暗黒街のアメリカン・ドリームを達成していく。腐敗がはびこる警察内で自分だけは腐ったリンゴになるまいと踏ん張り、麻薬ルートの解明と、それ以上の巨悪に立ち向かっていく刑事リッチー・ロバーツ。顔の見えない敵であったフランクをジリジリと追い詰めていく…。

長い(157分)がそれほど気にならなかった。
それ以外に気になったところがある。この作品のおもしろさがストーリーに依存しすぎているのではないか、ということだ。
演技が悪いわけではない(もっとも、よかったのはラッセル・クロウの養育権を争う最後のシーンだけだが)、映像が悪いわけではない(リドリー・スコットの映像が悪ければおわりである。さすがにスモークに光がテラテラあたるようなシーンはないが)、特に印象に残るようななにかが足りないだけである。

もちろん、大御所となってしまい巨大な制作費を使う以上無難なつくりになってしまうのだろうが、それではリドリー・スコットの存在意義がなくなるのではないか。

スタンリー・キューブリックのような方向性を持ってほしいのだが……。