樺の木のある青い館に
一人で住んでいるんだ
昔は息子夫婦と一緒に住んでいたが
けんかして出て行かれてしまった
おれが女房を
いじめ殺したようなものだからさ
邪魔になるくらい尻がでかかったんで
それを馬鹿にしてばかりいたら
妬むようなめつきで
隣のグレンダを見つめるようになった
人の悪口を言うのはやめろって
言いたかったがね
結局悪いのはおれだから
言えなかった
太ってて
不細工な女だった
だが
おれの好きな煙草を知ってて
いつも買ってきてくれてた
そんなことばかり思い出すのも
もうとっくにいなくなったからだ
ああ
くやしいよ
今更何を言ったって
誰も戻ってきてくれやしない
あんなに毎日
どやしたりしなければよかった
女は
どんなにいい加減な奴でも
ほめてやったほうがいいんだってことが
わかったのは
七十を過ぎてからだ
モーリス
おまえは失敗をするなよ
わかってるだろうけどな
神さまみたいに
女をほめたって
ばちはあたらないんだよ