「あらゆる役にたたないもののうちでも、きみのおかあさんのハンドバッグときたら、いちばん役にたたんものだ。あの人がハンドバッグをもとうともつまいと、けっきょく時間は一分のくるいもなくたっていき、月日は同じに流れていくんだからな。」
すると、ムーミンパパが、不平そうに口をだしました。
「かんじんな点は、そんなことじゃない。わしははくじょうしなければならないが、ママがハンドバッグをもっていないと、とても変な気持ちになるんじゃ。なにしろ、あれをもっていないママは、見たこともないからね。」
トーベ・ヤンソン「たのしいムーミン一家」