改正案は、確定した無効審決等の遡及効と再審の訴えについて、特許侵害訴訟等が確定した後に、無効審決等が確定した場合において、当該訴訟の当事者は、当該特許侵害訴訟に係る再審の訴えにおいて、当該審決の確定を主張することができないと規定しています(改正法104条の4柱書)。
報告書においては、再審制限の方法として、先に確定している侵害訴訟等との関係で確定審決の遡及効に係る主張を制限する方法と審決の確定を再審事由としない方法の二つが併記されていましたが、改正案は、侵害訴訟等に関する再審の訴えにおいて審決確定の主張を禁止すことを特許法に規定することにより、侵害訴訟等の再審において審決の確定が再審事由とならない効果を達成している点において両者の折衷案といえます。
また、仮処分命令との関係では、原則として主張制限規定の適用はありませんが、これは、仮処分命令発令後本案の棄却判決が確定した場合は、当該確定が事情変更(民事保全法38条1項)に該当するという理解を前提としています。また、仮処分命令発令後本案の認容判決が確定した後に審決が確定した場合については、改正法104条の4の柱書の括弧書きにより、当該仮処分の債権者に対する損害賠償及び不当返還請求訴訟(仮処分の効果を実質的に覆す訴え類型)において、審決が確定したことの主張が禁止されます。この点は、報告書の結論を簡潔に条文化したものといえます。
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