知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

顧客支援システム事件:新規事項追加裁判例

2011-12-16 10:29:39 | 特許権

顧客支援システム事件

平成21(行ケ)10400号

1 本判決は、新規事項の追加に関する裁判例です。

本判決は,「補正事項を実現するために,前記のような直接的な画面移動を実現することは,各種のサービスページに共通して,選択されたパソコンモデルの種類を認識・保存するとの技術的事項を導入するものであり,また,移動メニュの同じサービスページのボタンであっても,そのボタンが設けられている画面(又はその表示内容)によって,ボタンをクリックした場合の移動する先の画面又はその表示内容が異なるという技術的事項を導入するものであるから,当初明細書及び図面に記載された事項ではなく,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものということはできない」と述べ、本件補正を却下した審決に誤りはないと判断しました。

2 判例タイムズの解説によれば、補正について新規事項追加を禁止する趣旨について、「平成14年改正前の特許法17条の2第3項は,「明細書又は図面について補正をするときは,……願書に最初に添付した明細書又は図面(中略)に記載した事項の範囲内においてしなければならない」と規定しており,これは,明細書又は図面の補正について,当初明細書又は図面に記載されていない新規事項の追加を禁止したものと解されている。同規定は,平成5年改正(平成5年法律第26号)により特許法17条2項として新設された規定が,その後の改正により条文移動したものであるが,平成5年改正においては,従前,当初明細書又は図面に記載されていない事項であっても,明細書又は図面の要旨を変更しない限り補正を行い得るとされていた(旧53条1項)ことを改め,制度の国際的調和,権利付与の迅速化及び第三者の監視負担の軽減などを図ったもの」とされています。

この点、「明細書(特許請求の範囲を含む。)又は図面に記載した事項の範囲内」の解釈については,「除くクレーム」大合議事件は,「『明細書又は図面に記載した事項』とは,技術思想の高度の創作である発明について,特許権による独占を得る前提として,第三者に対して開示されるものであるから,ここでいう『事項』とは明細書又は図面によって開示された技術的事項であることが前提となるところ,『明細書又は図面に記載した事項』とは,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することによって導かれる技術的事項であり,補正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該補正は,『明細書又は図面に記載した事項の範囲内において』するものということができる。」と判示しています(参考文献:杜下弘記「特許法126条3項にいう『記載した事項の範囲内において』の解釈について(1)~(3)」判タ1307号47頁,1308号27頁,1309号36頁)。

3 本判決は、「除くクレーム」大合議事件の判断手法を踏襲したものです。ここでは、明細書又は図面の断片的な記載ではな無く、明細書又は図面のすべての記載を総合考慮して,当初明細書又は図面に記載されていない事項の有無を判断した点が参考になると思います。


2 コメント

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