1 本書の構成
本書の構成を僕の理解した限りで大まかに述べると以下のとおりである。
まず、第1章において、コーポレート・ガバナンスを経営者の規律のメカニズムとして位置づけ、そのメカニズムとして、「経営者の交代」と金銭的インセンティブとしての「報酬」があることを指摘する。
次に、第2章及び第3章において、「経営者の交代」と「報酬」に関して、実証データに基づく分析と検討が加えられる。
この検討 . . . 本文を読む
5 改善提案
5-1 提案の内容
大杉先生は、かかる制度分析の後、以下の2つの改善策を提案されている。
① 「第1に、現在の社外監査役が、監査役としての法律上の権限(事実の調査権限=会社法381条、違法行為の差止め権=385条)などを維持しつつ、同時に取締役としての権威・発言権を持てるようにするための法改正である。法制審議会で議論されている「監査・監督委員会」は、このような試みとして高く . . . 本文を読む
4 現行制度の分析について
4-1 社外取締役に対する評価
大杉先生は、大王製紙事件とオリンパス事件の共通性として、「現場に不正を知る従業員が存在し(オリンパス事件の発覚は従業員によるマスコミへの告発がきっかけとなった)、また監査法人も不正を疑わせる情報をつかんでいたことである。しかし、その情報が取締役や監査役の間で広く共有され、検討されることはなかった」。と指摘された上、「では、どうやっ . . . 本文を読む
3 オリンパス事件について
大杉先生は、オリンパスの第三者委員会の調査報告書をソースとして、同事件を以下のように要約されている。 [
「オリンパスは、1980年代後半のバブル経済期に金融商品への投資(財テク)を行い、バブルの崩壊により損失が生じたことから、90年代にはその挽回を狙ってハイリスク・ハイリターンの投資を行い、さらに損失が膨らんだ。90年代末には会計基準の変更により金融資産の時価 . . . 本文を読む
1はじめに
「会社法で企業不祥事を防げるか」は、大王製紙とオリンパス事件に関して、主として会社法という観点から大杉先生が検討を加えたものであり、示唆に富む論考である。また、両事件の簡にして要を得た要約ともなっており、コーポレート・ガバナンス及びコンプライアンスに関心を持つ者にとって必読文献といえる。
2 大王製紙事件について
大杉先生は、特別調査委員会の報告書をソースとして、同事件 . . . 本文を読む
オリンパスのMAによる損失処理事件について、監査法人の追及を断念させた「専門家の報告書」なるものがあるらしい。
中身が気になるので、調査報告書の完全版を読んでみた。
http://www.olympus.co.jp/jp/info/2011b/if111206corpj_4.pdf
問題の報告書(2009年報告書)については151ページ以下にて検討されている。
2009年報告書は、弁護士、 . . . 本文を読む
オリンパス事件に関しては、「飛ばし」と「MAの高額手数料」の二つの問題がある。
このうち、「飛ばし」は巧妙であったため、発見は困難ともいえる。この点、大杉教授は、「「飛ばし」については、監査法人がオリンパスが口座を開設していた外国銀行への照会(預金への担保権設定の有無の確認)をもっと徹底して行っていれば発見できた可能性があるが、それをしなかった監査法人に非があったとは断言できない。粉飾が巧妙だっ . . . 本文を読む
2-3 監査・監督委員会設置会社制度
2-3-1 導入の趣旨
新しい制度として、「監査・監督委員会設置会社制度」が提案されている。これは、業務を執行する取締役の監督機関として、監督・監査委員から構成される監査・監督委員会を設けるというものである。
その趣旨については、「取締役会の監督機能の充実という観点から,自ら業務執行をしない社外取締役を複数置くことで業務執行と監督の分離を . . . 本文を読む
会社法制の見直しに関する中間試案(案)に対する検討(その1)
1 構成
会社法制の見直しに関する中間試案(案)(以下「本試案(案)」)は、①企業統治の在り方(コーポレートガバナンス)と②親子会社に関する規律の2部構成である。
2 企業統治の在り方
2-1 テーマ
以下のテーマが取り上げられている。
① 取締役会の監督機能
② 監査役の監査機能
③ 資金調 . . . 本文を読む
標記決定の骨子は以下の通り。
①「公正ナル価格」の意義
産業活力再生特別措置法12条の3第2項及び第3項、旧商法245条の5第3項によれば、営業譲渡に反対した株主は、一定の要件の下、会社に対して、自己の有する株式を「営業ノ重要ナル一部ノ譲渡ニ係ルル契約ナカリセバ其ノ有スベカリシ公正ナル価格」で買い取るべきことを請求できることを定めているが、この制度は、会社が営業 . . . 本文を読む
標記高裁決定のポイントは以下のとおり。
① フェアネス・オピニオンとは、一般に、第三者機関が、組織再編や公開買付の当事会社に対し、買収価格や統合比率について、企業の財務的見地から公正であることを意見表明するものであるところ(甲81)、みずほ証券の算定書及び大和証券SMBCの算定書においては、いずれも「本件株式交換の公正性について何ら意見を表明するものではありません」としてフェアネス・オピニオンは . . . 本文を読む
標記決定の骨子は以下の通り。
① 株式交換完全子会社の株主による株式買取請求の趣旨
会社法785条1項は、株式交換に反対する株式交換完全子会社の株主は、同社に対し、自己の有する株式を「公正な価格」で買い取ることを請求することができる旨を定めている。これは、株式交換完全子会社の株主は、株式交換においてその有する株式を取得されて対価を交付される立場であって、株式交換自体により同社の企業価値が毀損さ . . . 本文を読む
標記決定の骨子は以下のとおり。
① 「公正な価格」の決定は裁判所の裁量。
② 吸収合併消滅会社の株主に対する株式買取請求権の趣旨
吸収合併消滅会社の株主は、吸収合併によりその所有する株式を取得される立場にあり、吸収合併自体により同社の企業価値が毀損されたり、又は、吸収合併の条件が同社の株主にとって不利であるために、株主価値が毀損されたり、合併から生じるシナジーが適正に分配され . . . 本文を読む
標記事件の田原補足意見について
注目点は以下のとおり。
① 裁判所の裁量を担保するものは、個別事案に関しては、幅広い資料の開示、一般的には事例の集積による比較検討。
② 理論面においても、「公正な価格」の算定方法について、更に深化した議論がなされることを願う。
以下、コメント。
①は異論ない。事例の集積のためには、株式買取請求を特別の非訟事件として、東京又大阪の専属管轄とした上で地裁・高 . . . 本文を読む
近時、標記の件につき、最高裁判決がなされました。
多数意見の骨子は、以下のとおり。
① 株式買取請求権の趣旨
反対株主に対して退出の機会を与えるとともに、退出を選択した株主には、吸収合併等がなされなかった場合と経済的に同等の状況を確保し、さらに、吸収合併等によりシナジーその他の企業価値の増加が生ずる場合には、株主にこれを適切に配分すること。
② 判断手法
価格の決定は、裁判所の合理的な裁 . . . 本文を読む
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