阿木燿子さんプロデュース・作詞、宇崎竜童さん音楽監修・作曲のフラメンコ「曾根崎心中」公演が、愛媛県内子町の内子座でありました。
3か月前に妹がチケットを取ってくれて、内子座、「曾根崎心中」の連想で、ふたりとも人形浄瑠璃だと思い込んでいましたが、出かける寸前にフラメンコだということがわかりました。
主人公のお初は鍵田真由美さん、徳兵衛は佐藤浩希さん、フラメンコの新たな可能性を追求するフラメンコ舞踊家・振付家です。
群舞はアルディソラ(鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団)のみなさんでした。
内子座は木蝋や生糸などの生産で栄えていた時代に、芸術・芸能を愛してやまない人々の熱意で建てられました。
座席は花道のそばの西桟敷席、開演時間が近づくにつれ、だんだん席が埋まってきました。
舞台の正面には扁額「藝於遊」(芸に遊ぶ)がかかり、2階席には大向が広がっています。
フラメンコでタップを踏むので板張りの床はしっかりと養生されていました。
開演のブザーが鳴って、はじまりました。
一番○○寺、二番○○寺、三番○○寺、……低い男性の歌というより呪文のような語りに合わせて人々が行進していきます。
死をイメージさせるプロローグでした。
遊郭で遊ぶ人たちの華やかな場面もあり、紆余曲折を経ながら物語が進んでいき、心中の場面は、土佐琵琶の弾き語りで演じられます。
物語りのあらすじは分かっているし、歌詞が日本語なので、ダイレクトに心に入ってきます。
タップを踏む靴音は静かなときも激しいときも曲のリズムにぴったり、公演も回を重ねて、全員の息があってこその上演でした。
花道の使い方もうまく、すぐそばで生身の演者を見ると、自分もいっしょにその世界に入っていくようでした。
情念を込めて唄い踊るフラメンコと人形浄瑠璃の世界はたくさんの共通点を持っているのだと思いを新たにしました。
衣装は着物をうまくアレンジしてあり、裾の広がりはため息の出るような美しさ、着物の下は黒のアンダースカートと黒のタップシューズなのですが、なんの違和感もありませんでした。
そしてエピローグは、二十三番○○寺、二十四番○○寺……。
アンコールの拍手で出演者のあいさつがあり、2度目のカーテンコールでは宇崎竜童さんがギターを弾きながら1曲歌ってくださり、3度目のカーテンコールでは阿木燿子さんも姿を見せてくださって、観客もスタンディングオベーションでした。
宇崎竜童さんの生の歌声をはじめて聴きましたが、だいすきな歌手のひとりとなりました。