2019年田植えが終わり約20日が経過した。順調な気温の推移で田んぼの稲も順調な生育に見える。この頃の気温の高低差が大きく心配なところもある。「春、田圃に稲を植え、秋に実りを収穫する」ことは稲作農家の大きな作業。一つ一つの作業の終わりは次への作業が始まるまでホッとした気分が漂う。田植え作業の終わった田んぼにある種の異常を感じたのはつい最近のことだ。
2年ほど前の6月末、由利本荘の友人と富山の友人宅訪問を企画し、私は奥羽本線経由で秋田に向かい羽越線で新潟に向かった。秋田駅を出発し車窓に田植え後の景色を見て唖然とした。田植え後の田んぼが雑然としていたのに気づいた。現在の田植え作業はすべて機械作業。田植え機が畦畔でターンした場所に稲苗の姿がないのだ。
由利駅から乗車した友人に聞くと近年由利地方で田植えの終わった後田んぼに入り「補植」作業する人はほとんどいないと云う。列車の風景は山形荘内地方に入っても見られた。国道や高速道路側よりも鉄道本線側にこれらの田んぼは多くみられる。
一般的な田植え後の生育情報。左正常、右欠株の圃場
田植え機が入ってきたのは昭和50年の中頃、はじめ歩行型の2条植えから4条植えの機械が入り一気に田植え作業が捗った。育苗箱に蒔かれた苗の不ぞろいがあれば植えられない場所が多く出たが当時一通りの田植え作業が終わると、一斉に欠株等に補植が行われた。当地方では「植えなおし」と呼び結構時間がかかった。丁寧に補植作業を行えばそれなりの収穫が約束された。近年田植え機は乗用型になり作業は一気に進むようになった。つい数年前まで「補植」作業は当たり前のことだった。欠株はほとんど田植え機の植え爪に当たらなかったか、苗がかき取られないのは育苗土に問題があるのかもしれない。
2019年田植えの終わった各地の田んぼを注意深く回ってみた。
右側の写真は苗質が悪く一条または二条10数メートルから中には100メートルも植えられていない個所もあった。
横手市浅舞 2019.6.20
畦畔で田植え機がUターンされる部分が植えられていない。
羽後町 2019.6.21
田圃の耕耘が深いのか植えられた苗が沈没してしまった。
湯沢市山田地区 2019.6.19
同じように植えられた田んぼも主食用、加工用、畜産用、ホールクロップ用と多様になっている。政策的な規模拡大奨励で耕耘、田植え等機械作業以外の作業から撤退の傾向にある。極端な場合を除き収量がそれほど減収しない。米価が安く生産意欲の減退がみられることが考えられる。
見渡せばほとんど変わらない風景、多くの農家が稲作から撤退が始まっている。先日鉄くず回収業者と話したら、廃ビニールハウスの持ち込みが急激に増えたという。
※2019.6.25のものを投稿