湯沢市川連町は川連、野村、大舘、久保の4地区で構成され、川連に麓、川連、上野の3集落が入っている。川連地区は川連城の城下町として形成されてきた。川連城が築かれたのは、寛治年間(1089~1093)といわれ稲庭城に小野寺氏が居城する頃に、小野寺道基が川連城に居館して築城したとされる。菩提寺の神應寺は1050年頃から存在する古い集落。
現在全国的に空き家が急増している。総務省調査では空き家は全国に849万戸、長い間人の住んでいない空き家が349万戸と報道されている。
今回これらの状況の中で集落内の住居の動向を振り返ってみた。今回私の持っている資料と「人口ピラミットPlus」を参考にした。下記の表は私が調査し集計した年代ごと増えた戸数と減った戸数の一覧。
麓集落の戸数の推移(明治3年~令和5年)
手元の資料で麓集落戸数の一番古いもので明治3年(1870)36戸、これは古地図に記載されていた。詳細はブログ「二つの古地図 川連村・大舘村」(2014.06.30)。
大正14年(1925)は45戸、当時集落内で部落山林の所有権を巡る争いがあり集落全員の住所、戸主の名が書かれた資料があった。
平成12年(2000)に減った戸数と新たに加わった戸数を昭和20年(1945)中心にして分類した。集落に保管されていた総会議事録を精査。明治、大正、昭和30年前は不確かなものしかなかった。比較的整理された集落総会議事録は昭和30年以降(1955)でその議事録を参考とした。
その結果、昭和20年(1945)以前減った戸数8戸、増えた戸数9戸で計46戸。昭和20年(1945)以降平成12年までの55年間での増えた戸数16戸。減った戸数4戸で12戸増え集落戸数計58戸だった。一時的に集落戸数59戸の時期があったが詳細は不明だ。
戦後増えた戸数16戸の内、集落内からの分家等が9戸、他集落からの移入7戸。他集落は行政区を異にする隣集落が主。他の市町村からの移入はない。昭和から平成にかけて麓集落戸数57戸は定着していた。減少が見えてきた外の地区同様、バブル崩壊以降で近年加速されそうな傾向にある。
平成22年(2010)には53戸。現在令和5年(2023)は平成22年(2010)から3戸減り1戸増えたので51戸が集落の戸数。令和5年現在、集落には3戸の空き家がある。3戸は横手市、秋田市、長期入院となっている。2戸は確定される状態だが1戸は流動的だ。
集落内には長年解体されない「空き家」が一戸ある。昭和60年頃に千葉県へ移住したとされるが実態はわからない。崩壊の危険が危惧され、再三対応を行政機関に訴えても持ち主とも連絡が取れずに現在に至っている。
崩壊した住居 K(H) 宅
平成12年以降集落から離れ、他地区へ移転し解体された住居を追ってみた。
空き家状態の2戸が令和4年(2022)の9月中旬から11月下旬まで、解体作業が連続して行われた。重機のウナリ音は集落内や取り囲む周囲の山に響き渡った。解体の重機の音はどことなくもの悲しさが漂う。2ケ月も連続しての住居の解体の音は在りし日の交流と惜別の哀しさの宣言にもみえた。
左 G(T)宅 右 T(M)宅
G宅は家主が住居を大仙市に移し、お盆等不定期に帰ってきていたが空き家状態が20数年続いていた。T(M)宅は6年前に湯沢市の移り空き家状態が続いていた。両宅は昨年秋9月から11月にかけて解体した。T(M)宅の写真は解体作業で重機搬入直前の状態。
2010年以降、上記の2戸の解体前の住居6戸を、振り返ってみた。一部はgoogleマップから拝借した。
左 K(S)宅 右 T(M)宅
K(S)宅は10数年前から秋田へ移転、定期的に帰ってきていたが6年ほど前に解体。T(M)宅は玄関正面、6年ほど前湯沢市へ移転、昨年10月解体。
左 T(K)宅 右 G(T)宅
T(k)宅は20年ほど前に横手市へ移転、10年ほど前に解体。G(T)は平成に入ってから大仙市に移転、毎年のように盆等には帰ってきていたが昨年9月に解体。
左 I(A)宅 右 S(H)宅
I(A)宅は施設に入っていたが亡くなり4年前に解体。S(H)宅は施設に入っていて亡くなったという。10年前は車庫等残っていたが大雪のため倒壊し解体された。
現在集落内に空き家が3戸ある。その他、麓集落から他地区へ移転等で過去に解体された住宅地は2ヶ所。現在一か所は畑にもう一か所は市の管理地になっている。
現在集落内戸数48戸、1人世帯が8戸、2人が19戸、3人が9戸、4人が5戸、5人以上の戸数が7戸となっている。若い世代は生活拠点を他の地域に移して生活している。今後も麓集落内の住宅の減少は続く可能性は高い。
麓集落世帯人員 2023.1
全国的に長期間人の住んでいない空き家が349万戸、住宅の総数に占める割合は5.6%、特に高知、鹿児島、和歌山、島根では10%を超えが報道されている。
新築の場合、住宅ローン減税などの優遇措置が取られてきたが、住宅の「終活」への政策が圧倒的に少ない。現在家財道具の整理や住宅解体費用は平均的な住宅で200~300万、他の地域の旧家で500万の見積もりがあったので放置しているとの話もあった。
政府は空き家放置対策として、税制優遇の対象から外す範囲を広げることを検討している。倒壊の危険等の有害となるおそれのある「特定空き家」について、「空き家対策特別措置法」の対象外とする規定を設けている。実質増税策で平成27年5月に施行されたこの法律にどれほど効果があったのか実態調査を急ぐべきだ。
人口減少、空き家が増える経済状況の政策転換を確立すべきだ。その対策を希薄した状態での「空き家放置対策」は本末転倒と言える。
朝日新聞は1月21、22の両日、世論調査を実施した。岸田首相の経済政策に「期待できる」は20%で、「期待できない」の73%が大半を占めた。少子化対策には「期待できる」が20%で、「期待できない」が73%にのぼった。
「政治とは、慎重な議論と検討を積み重ね、その上に決断し、その決断について、国会の場に集まった国民の代表が議論をし、最終的に実行に移す、そうした営みです」等と1月23日の通常国会の施政方針で述べた。
重要政策を閣議決定で勝手に決め、いまさらながら何事もなかったかのようなふるまい。増税を前提とした軍拡、次世代原発の建て替えを含めた原発回帰にはやる気満々で、少子化対策は「次元の異なる少子化対策」と言い換えただけで、その具体策については何も語らない。
少子化は空き家の増加と衰退を加速させる。麓の戸数減少は今年令和5年(2023)で100年前の戸数45戸に近づき、数年後は150年前の明治初期の戸数36戸に向かっている。