「小さい頃の思い出話は、色がない」と、ある人がいった。セピア色なのだそうだ。そうかもしれない。私も6 、7歳頃の風景、というか背景はモノクロ。そんなこといわれたらやたら気になり始め、思い出をたぐってみた。不思議と真っ黒と真っ白がまずうかぶ。色がかろうじて出てくるのは、庭の草花の色や、縁日のお面の赤や青。金魚やひよこの赤や黄色。およそ、当たり前のささやかな生活の色だ。急激に色があふれ出すのが小学生の高学年から。フェルトという新しい素材か゛出てきて、身の回りに洋服や小物に使われ始めた。たまたま私は夏休みの宿題で、カラフルなフェルトをつかっててさげを作り、秋の展覧会かなにかで区長賞をもらった。たかが小学生の手縫いのふくろです。かたちもよくおぼえていないが、ビーズを丹念に、何日も縫い付けた記憶が。なんだ、50数年たった今も、結局同じことしている私なのです。