「夏が好き」と公言していたのは若いころのお話。
あの頃は、日焼け止めなんて塗らないで焼くだけ焼いて、
海辺で転げまわっていた。
あゝ、何ということを・・・、
大体60代の自分なんて想像してなかったし、
シミ、しわ・・・、そんなことは他人事で、真っ黒い髪の艶も永遠のものと思っていた。
時は流れ、人並みに美容院でカラーリングもし、時々はコラーゲンのパックなどもする。
時々、電車の中で弾けるような肌の女性に出会うと「そのみずみずしい細胞少し頂戴」と言いたくなる。
その昔、デパートの洗面所で、見ず知らずの女性に声をかけられたことがある。
「綺麗な髪ね、なんて綺麗な黒髪・・・、大事にしてね」と。
私は戸惑い、返事もしないで鏡越しに会釈した。
目がきれいとか、足がきれいとかではなく「髪」
白髪の70代と思われたその女性の顔を、今でもぼんやり思い出す。
何故かそのあと、何故か私は涙ぐんだのだ・・・、美しい十代。
初々しく、かわいかった。(自分で言うのもなんですが)