
少し前に出版された田中優子の「布の力」という本。
私の工房の片隅に積まれている本たちの中の1冊。
サブタイトルは「江戸から現代へ」とあり、かなり学術的な内容だ。
著者は法政大学の教授で、テレビにコメンテーターとして出演している時はきもの姿。
動機はキャリアウーマン・スーツというのが苦手だったのと、ジーンズや巻きスカートで
講演するわけにいかず、箪笥の中に母や祖母の着物があり、買わなくて済んだとある。
この本の特徴は、「布」本来のオマージュにとどまらず、江戸時代をさかのぼる
はるか昔から「メディアとしての布」を、東南アジアから地球規模、宇宙規模で
分析しているところ。何で布が宇宙に結び付くの?と思われるでしょう。
ここは読んでいただくしかない。
そんな難しいことよりも、本書の扉にあった著者の素直な言葉に私は魅入られた。
「着物を広げたり、まとったり、を繰り返していくうち、その手には
洋服に触るのとは全く異なる感触の記憶が積み重っていった。それは着物ではなく
まさに「布」という生き物の感触であった」とある。
まさに私も同じ思いに、突き動かされた一人できもの愛は歳と共に深くなっている。
2010年 朝日新聞出版 田中優子 「布のちから」
お勧めです。