新しい本ではありませんが、実家に帰る新幹線の中で読もうとカバンに入れてきました。
旅の時は読書もつい集中力散漫になるので、難しい本ではなく、一気に読める娯楽小説に限ります。
というわけで、朱川湊人さんの「太陽の村」を読みました。
朱川さんの小説はいくつも読んでいますが、どれも最後には心が温まる話だったり、ちょっと切なく泣ける感じだったり、時には衝撃を受けるもので個人的に大ファンですが、これは別の意味で大衝撃(笑)
帯の「直木賞作家乱心!?」とありますが、まさに大きい笑いから、マニア向けで思わずプッと吹き出してしまうような笑いまで、一貫して作品を貫いています。
ストーリーは、色白デブなオタク青年が、飛行機事故で謎の島に流れ着くことから発展していきますが、この島はとにかく胡散臭い。
昔の日本にタイムスリップしたのかと、オタク青年は色んなアニメや映画の例を上げながら推測しますが、どうやら年号も権力者の名も聞いたことがなく、昔の日本のような異世界の島が舞台。
でも出会う村人達がなんだか日本昔話で聞いたような名前だったり、親の敵討ちをしようとする少年が登場したりと、どこかで聞いたような物語り的な世界。
しかしその島で生きていく為に、なんとか順応するオタク青年はいつしか村人たちを年貢で苦しめる悪人地頭をこらしめることに。
ここで話が急展開、胡散臭さ大爆発!
やっぱりタイムスリップなど起こるはずはなく、この島の真実を知るのでした。
語り手がこの青年なので、そこが特にいい味を出しています。
そして癖のある登場人物たちのやりとりで、畳み掛けるような笑いの応酬は、まさに作者の意図したところといえるでしょう。
ほんと、サービス満点と思われる作品でした。