しかも、二匹。親猫がうろついていたのでひとまず安心。
人間世界もさほど楽なもんじゃありません、と納得しかけていた。
ある日。二匹の子猫が一匹になっていた。生存競争はどこも激しい。僕も人を蹴落とし蹴落とされ今日まで生きてきたのだ。野良猫が死のうと生きようとぼくには関係ない。人間世界も生きていくのはしんどいよ。・・・
ところが一晩中か弱い声で泣かれると、どう理屈をたてても心は落ち着かない。心配だ。
真夜中にその鳴き声が止まるともう頭は冴え返ってしまう。
救出。
いや救出したことになるのか。今度は親猫が一匹残ったわが子を探して鳴く。
究極のジレンマだ。情けは人のためならず、か。分かっていてもここは、「情に掉させば流され」てしまった。
そのかわりこの子が死ぬまでは僕は死なない。天地神明に誓ってこの思いは変わらない。
怖がりなのでビビと名付けた。ビビっていたから。
ケージ、トイレもそろえた。
元気だ。
先に家の一員になった「カラシ」にあまえる「ビビ」。
誓った言葉に変わりはないが、ただ、とても大きくなった。
僕自身、人間の子供が二人いるが猫のほうがはるかに大変だ。ビビはカラシの2倍の大きさになり餌は食うしうんこも大量だ。
だが一日ぼくが留守にしただけでエサも食わない。トラみたいにでかくなって甘えん坊で。僕の腹の上で熟睡する。
カラシはカラシで理屈をこねる。
(注 カラシの名の由来はカラシニコフから。ニコフは信頼できるよそのお家に引き取られていった。)