北総研研究発表会から「人口減少時代の地域づくり」テーマです。
人口拡大局面は都市での「住宅地」拡大局面でもあり、全国どこでも
「市街地の拡大」ということが普遍的に進行してきた。
農地などだった土地に人間が住むことで、そのためのインフラが整備された。
道路が整備され上下水道が開削され電気・通信などがネットワークされた。
経済的には活性化するし人間が住むことで住民税、固定資産税などの税収が上がり、
長期間かけて敷設コストと維持コストは見合うとされ「合理的」と判断された。
日本全国、ほぼ均一にその考え方で「都市が膨張」した。住宅の新築ラッシュ。
図表は北海道内の自治体事例として現在の「むかわ町鵡川」街区の俯瞰図。
1960年代から現在まで市街地面積はなんと3倍超になっている。
1961年に50万㎡だった市街地が2007年段階で167万㎡。
青の枠内から、赤の枠内まで市域が拡大したのだという。
世帯数は38%増加も人口はおおむね2/3に。世帯人員は半減。
そういった状況で、当然税収は総体的に減るけれど、
拡大した市街地に対して道路維持、上下水道維持などのインフラコストは増大する。
人口減少局面でもそこに人が住んでいればこれらは維持される必要がある。
人口予測では2045年にはさらに現在からも半減という推計。
半分になる人口が負担しなければならないコストは、当然2倍になる。
自治体経営と考えれば、誰が考えても同じ問題にぶち当たる。
むかわの事例は別に特異なケースではなく、それこそ北海道・全国一様。
まったく同じ問題がひとしく地方自治体を襲っていくことになる。
さらにこのように拡大した市街地は、災害リスクも高めている。
上の図は太平洋に面したむかわ市街地域での「津波災害予測」。
人口居住地・市街地のほぼ全域が危険と青く色づけされている。
街が開かれた初期には災害危険度も勘案されて土地開発されただろうけれど、
人口膨張プロセスで徐々に「危険地域」にも人間居住域が広がった。
こうした地域の「防災」コストは当然嵩んでいくことは明らか。
被害想定の拡大はもちろん、そこからの復旧を考えてもコストは巨大化する。
これもまた想定災害に違いはあっても全国の自治体に普遍的な現実。
高度経済成長期、日本列島改造というようなイケイケドンドンが
社会の趨勢であって、人口減少の危機などは論じられなかった。
大きいことはいいことだ、みたいな一種の集団的思考停止が蔓延していた。
スマートシュリンク(賢い縮小)という提言が近年されてきているけれど、
しかし経済社会構造と既得権益システムはスケールメリット思考が前提で
社会常識の基礎深く人々の意識に根付いている。
「いまさら止められない」みたいな論理が幅をきかせているといえるでしょう。
しかし、どう考えてもこのコストは誰にも負担できない。
確実に訪れるカタストロフをどう回避できるのか、
今われわれの世代が解決の糸口をつけておかなければ、
若い世代はそのツケを大きく支払わされることになる。
非常ベルは深刻なレベルで鳴り続けていると言わざるを得ない。