Light in June

文学やアニメ、毎日の生活についての日記。

魔女 才能 血

2009-08-02 00:00:44 | アニメーション
『魔女の宅急便』について、ちょっとだけ思ったことを。

この映画は才能についての映画だとぼくは昔から思っていて、というのは、魔女の能力というのは人間が誰しも持っている才能というものの比喩ではないかと考えられるからです。キキがほうきで空を飛ぶ能力は実は特別なものではなくて、数多ある才能の一つだというわけですね。

まあ大人がこの映画を観れば多くの人が同じような感想を持つだろうなとは予想がつくのですが、あえて話を進めます。

したがって、この映画はキキが自覚していなかった才能をはっきりと認識し、それについて熟考し、ついに本当にそれを開花させるまでを描いた作品、として捉えられるわけです。しかし開花させた、と言い切るのはちょっと早計かもしれませんね。才能と共に歩んでいく話、とでもするのが妥当なところでしょうか。

これが才能についての物語であることは、別の観点からも明らかであるように思います。それは、声優さん。主人公のキキの声は高山みなみがやっていますが、彼女はあの絵描きの少女ウルスラの声も担当しているんですね。エンドロールを見れば分かることですが。つまり、キキとウルスラというのはパラレルな関係として描かれているのです。キキの成長した姿がウルスラ、ということかもしれません。映画の後半、ウルスラは「絵を描くこと」についてキキに話をしますが、それはまさに才能一般の話でもあります。同じ声をした者同士が才能について語らっているわけですね。

魔女は「血」で空を飛ぶ、とキキは言いますが、それは、才能というものはその人に生来与えられているものなのだ、ということを示唆しているのではないかと思えてきます。それを発見し、伸ばすことは人間の義務なのかもしれません。

でもキキにはもう才能が明らかである分、彼女はぼくらよりも幸福ですよね。ハッピーエンドで終わるべくして終わる映画、ですね。