Light in June

文学やアニメ、毎日の生活についての日記。

まさかの結末

2010-04-20 23:35:17 | 文学
今日は調子の出ない一日でした。
いつも出てるわけじゃないけど、いつにも増して、負の引力に引っ張られていました。
いや、あくまで調子の話です。

さて、ショートショートを読んでみよう、ということで、電車の中で長期間に渡ってちょっとずつ読んでいた『まさかの結末』という本を読み終えました。ハイネというドイツのベストセラー作家が書いたそうです。ハイネって言っても「あのハイネ」ではないです、念のため。

正直なところ、あまりおもしろくない。「まさかの結末」という題名通り、結末に趣向を凝らしているのですが、別に・・・といった感じで。何が悪いんでしょう。非常に印象的なことを言うと、胸に迫って来るものがない。かなり軽い感じの作品で、中には冗談みたいのもありますし、一生懸命書いたんだろうけど、一般の高校生の考えたような妙に深刻ぶったのもありました。

機知が平凡で、目を惹くものがありません。「復活」などはほとんどあり得ない設定で、意外な結末を迎えますが、それもどこかで見たような・・・という気にさせられます。内容に深みがないんですよねえ。霊安室に寝かされた男性が息を吹き返して、こっそり家に戻るのですが、そこで妻の浮気と息子の自分への背信を目にします。男は息子の拳銃で妻とその浮気相手を撃ち殺し、そして霊安室へと踵を返します。大量の睡眠薬を飲んで永遠の眠りにつきながら、息子が犯人に仕立て上げられることを夢見る、という話。
題材は確かにおもしろい。でも、どこかで見たような話ですよねえ。たぶんハリウッドだったら、このストーリーに男が自らの人生の意義を考えるシーンなんかを挿入するんでしょうけど、そういう場面や台詞もない。凡庸さにも届かない、という出来なのです。チェーホフだったら、まあこんな題材では書かないでしょうけれど、これが人生なのだ、この残酷さが、などという意味のことを男に悟らせて終わり、にするかもしれません。

よくは書けている。でも省察がない。あったとしても、それは「秘中の秘」のような高校生レベルのものだったりします。おやっというのもありましたけどね、でも基本的にはまるで興をそそられない話がほとんどでした。