おはなしきっき堂

引越ししてきました。
お話を中心にのせてます。

あなたはだれ?

2007年05月23日 | ショート・ショート
ある日ふと食事中に目をあげると目の前に見知らぬ男が私の前に座っていて、私が作った食事を食べていた。
背中にさーっと冷や汗が流れる。
怖くなって横を向くと私の息子がニコニコ笑いながら食べている。
少しほっとする。
でも、この前にいて私の作った物を当然のように食べている男はだれなんだろう。

怖い・・・怖くて声も出ない。

すると横にいる息子が言った。

「お父さん、このお肉美味しいね!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ある日をさかいに妻が私の事がわからなくなった。

ある夕食の時に
「あなたはだれですか?なぜ私の作った食事を食べているのですか」
と言われた。

冗談を言っているのだと思った。
でも、目を見ると真剣そのもので本気で私の事がわからなくなったのだとわかった。

息子やそのほかの事はわかるのだが私の事だけは認識が出来ない。
家の中にそうすると何故私のものがあるのだと言うとそれは理解が出来ず、とんちんかんな答えが返ってくる。

病院に連れて行き、私は彼女の夫だと何度も説明する。
医者は心因的なものが原因だと言う。
どうしたらいいんだろう。
妻はそれからも普通に会社に行き、そして子供の世話もし、日常の事もしている。

でも、その日をさかいに2人分しか食事を作らなくなった。
私が家にいる事は、医者から説得されなんとか認めているが相変わらず私が夫だと言うことを認めない・・・と言うか認識が出来ない。

その日から私は自分の食事や身の回りの事は自分でしなければならなくなった。

子供は不思議に思っているみたいだが別に私の事がわからないだけでそれ以外は妻は普通なのでそれがいつもの事になってきた。

たまに私の作った食事をつまみ
「まずい」と言う。

私もそのとおりだと思う。
料理の本を見て悪戦苦闘するもうまく味付けが出来ない。
私は結婚するまで1人暮らしをした事がなく、身の回りの事はすべて母親まかせだった。

小学校の息子があまりの私の料理のへたさにあきれ、なんと彼がチャーハンを作ってくれた。
お母さんに教えてもらったのだと言う。
洗濯物のたたみ方、これも意外な事にきっちりと出来ていた。
お母さんが帰ってくるまでにいつも洗濯物を取り入れてたたんでいるらしい。

少しスパイスの効きすぎたチャーハンはとてもうまかった。

そして玉ねぎを切ったまな板を洗うとき少し目にしみた。
涙がとまらない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

つい最近、考えた話です。
食事中にふと・・・。
目の前にいるのは旦那さんだとわかっているのですけど、「誰?この当然のように目の前に座って偉そうに私の作ったのをうまいもまずいも言わずに食べている他人は・・・」と思ってしまって。

先日、テレビで男性だけの料理教室があるのをみました。
作った物を食べて一緒にお酒飲んでました。
(このお酒も教室代に入っているそうです)
なんだか素敵。
もっと増えればいいな・・・と思います。

さて上記のお話の続き、どうしましょうか?

ハッピーエンドにします?
この旦那さんは会社の帰りに料理教室に通い、息子と一緒に料理を作り、妻に食べさせる。
すると食べた妻が
「あら、美味しいわ!お父さんが作ってくれたのね!ありがとう、あなた」
と言って旦那さんのことがわるようになって・・・ハッピーエンド。

もしくは・・・
エンドレスな悪夢を。
旦那さんはそんな妻とわかれ新たに結婚する。
そしてまたある夕食の時、新婚の妻に言われる。
「あなたはだれですか?なぜ私の作った食事を食べているのですか」

・・・救われないな~。
やっぱり前者のハッピーエンドの方がよろしいですね。

                                     2007/5/19 本誌ぺんきっきより


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マザー

2007年05月23日 | ショート・ショート

僕は過去がわからない。
両親の記憶がない。
父は名前がわからず母は僕を産んですぐに亡くなったらしい。
気がついたときには、もう一人ぼっちだった。
母に会いたい・・・そう言う気持ちを押さえきれずにいた時に僕の目の前に歪んだ空間が広がった。
気がついたときに僕の目の前に「その人」はいた。
ひと目で僕はその人に恋をした。
でも・・・ここはどこなんだろう。
町並みに古い写真の香りが漂う。

その人と暮らし始める。
その人は言った。
「子供が出来たわ」
聖母の微笑み・・・。
喜んで手を握ろうとした時に僕の手がなくなったことに気がつく。
その人を抱きしめようと立ち上がろうとした僕の足がないことに気がつく。
これは・・・僕はいったい・・そう思う意識が遠のいていく。
その人の声がかすかに聞こえた。
「あなたを産んであげる・・・私はあなたの・・・」

もう考える事が出来なくなって来た。
ただ、僕はわかった。
僕はまたその人、僕の「母」から生まれてくるのだ。
心地よい波にのまれ段々、幸せな感情が生まれてくる。
僕は僕の愛しい人からまた命をもらう。
そして生まれてきた「僕」はまたその人を探すのだ・・・永遠に。




これは私が高校生ぐらいに作った話。
もしかするといろんなものにかぶれてたから似たような話があるかもしれないけどご勘弁を。
その時に作った文章と違うかもしれないし、内容もちょっと違うかも知れない。
確か、学校に提出したはずで返って来たのかどうかも分からず。

ショート・ショートが好きで、星新一さんの本はほとんど読んだ。
自分でも何か書いて見たくて何篇か話を作ってみた。
上の話もそのひとつ。
自分でのテーマはなんだったかのかよくわからないし、こうやって文章にしてみると自分でもよく何がいいたいのかもわからない。
無理矢理つけるとしたら「マザー」かな・・・
当時はなんてつけたんだろう。

なんとなく書いてみただけで、意味は別にありません。
ただ、自分も今何かを探しているような気がして・・・。

私は今何を探しているのか・・・それが私の今の「テーマ」なのかもしれない。

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                                2006/7/19 本誌ぺんきっきより
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