古典に人間学を学ぶ
今年の夏は、かつてない気候の変化を肌で実感することができた。以前には見られなかった嶺東の山間地方にも酷暑注意報が何回か発令された。地球人の過消費によるところの地球温暖化にその原因があるのは明らかなのに、国ごとの経済発展を理由に改善をしようとしないのは、まるで制動装置が故障した車が坂道を疾走するようなものだ。
このような渦中にも季節の移ろいに従って花は咲いて散る。このごろの山中は、山紫陽花が盛りだ。日向より日陰を好む山紫陽花は大きな木の陰の下で、まるで濃い藍色の星の群れが降りて息をしているようだ。目がはっとするように鮮烈だ。一人で見るのがもったいない。
春秋戦国時代の末期、ある若者が国々を巡り先人たちの門をたたきながら軍事学と兵法、政治学を学んだ。そんなある日、橋の縁に沿って歩いていると、ぼろぼろの服を着た老人が近づいてきてわざと靴を橋の下に落としてしまった。
「そこの、若いの、降りて行ってちょっと靴を拾ってきてくれ」
若者は、むっとしたが、相手が老人だったので、ぐっとこらえて橋の下に降りて行き靴を拾って来た。
ところが、老人はさらに、その靴をはかせてくれと言った。若者は、ことの次いでと何も言わず腰をかがめて丁寧に靴を履かせてやった。
すると、老人が言った。
「お前はなかなか見所があるやつだ。5日後の明け方ごろ、ここに来なさい」
老人はこの言葉を残して忽然といなくなった。
5日後の明け方若者は橋に行ってみると、老人はすでに来ていた。
「年寄りと約束した者が、なぜこのように遅れてくるのだ。5日後にまた来い」
老人はこのように怒鳴って行ってしまった。5日後、今度は鳥が鳴く声を聞いてすぐに行ったが、老人はすでに来て待っていた。
「また、遅かったな。5日後にまた来い」
また、5日後に若者はまだ日が変わらないうちに、暗闇を手探りしながら橋に行った。すると、老人が現れ、本を一冊差し出した。
「これを読みなさい。この本を熟読したならば、お前は王の軍師になることができる。10年後には、優れた軍師になって世の中に名を馳せることになる。」
この言葉を残して老人はどこかへ消えた。若者がその本を見ると、태공망(강대공)が書いた육도삼략(六韜三略;中国の兵書の名)という兵書だった。若者はその本をすべて暗記するほどに繰り返して読んだ。
このときの若者が、後日、漢を起こした유방の軍師となり、それを成功に導いた장량(張良)である。
本の中にはこれのように、ただの一冊で人の人生を決定的にするような影響を与える本がある。
昔の人たちは古典から人間学を学び、自身を治め高める勉強をした。しかし、最近の人たちは薄っぺらな知識や情報の罠にかかり、古典に対する嗜好があまりにも不足している。自分なりに確固たる人生観や倫理観がないために、目の前の小さな利害関係にひっかかってことごとく倒れてしまう。
人類の精神文化の遺産である良質の本を通して世の中を見る目が開かれて人生の均衡を維持することができる。
何の足しにもならないテレビ番組や、新聞記事で頭をいっぱいにすることは、栄養のない食べ物を体にぎゅうぎゅうと詰め込むことのように、精神の害となる。
今年の夏は、かつてない気候の変化を肌で実感することができた。以前には見られなかった嶺東の山間地方にも酷暑注意報が何回か発令された。地球人の過消費によるところの地球温暖化にその原因があるのは明らかなのに、国ごとの経済発展を理由に改善をしようとしないのは、まるで制動装置が故障した車が坂道を疾走するようなものだ。
このような渦中にも季節の移ろいに従って花は咲いて散る。このごろの山中は、山紫陽花が盛りだ。日向より日陰を好む山紫陽花は大きな木の陰の下で、まるで濃い藍色の星の群れが降りて息をしているようだ。目がはっとするように鮮烈だ。一人で見るのがもったいない。
春秋戦国時代の末期、ある若者が国々を巡り先人たちの門をたたきながら軍事学と兵法、政治学を学んだ。そんなある日、橋の縁に沿って歩いていると、ぼろぼろの服を着た老人が近づいてきてわざと靴を橋の下に落としてしまった。
「そこの、若いの、降りて行ってちょっと靴を拾ってきてくれ」
若者は、むっとしたが、相手が老人だったので、ぐっとこらえて橋の下に降りて行き靴を拾って来た。
ところが、老人はさらに、その靴をはかせてくれと言った。若者は、ことの次いでと何も言わず腰をかがめて丁寧に靴を履かせてやった。
すると、老人が言った。
「お前はなかなか見所があるやつだ。5日後の明け方ごろ、ここに来なさい」
老人はこの言葉を残して忽然といなくなった。
5日後の明け方若者は橋に行ってみると、老人はすでに来ていた。
「年寄りと約束した者が、なぜこのように遅れてくるのだ。5日後にまた来い」
老人はこのように怒鳴って行ってしまった。5日後、今度は鳥が鳴く声を聞いてすぐに行ったが、老人はすでに来て待っていた。
「また、遅かったな。5日後にまた来い」
また、5日後に若者はまだ日が変わらないうちに、暗闇を手探りしながら橋に行った。すると、老人が現れ、本を一冊差し出した。
「これを読みなさい。この本を熟読したならば、お前は王の軍師になることができる。10年後には、優れた軍師になって世の中に名を馳せることになる。」
この言葉を残して老人はどこかへ消えた。若者がその本を見ると、태공망(강대공)が書いた육도삼략(六韜三略;中国の兵書の名)という兵書だった。若者はその本をすべて暗記するほどに繰り返して読んだ。
このときの若者が、後日、漢を起こした유방の軍師となり、それを成功に導いた장량(張良)である。
本の中にはこれのように、ただの一冊で人の人生を決定的にするような影響を与える本がある。
昔の人たちは古典から人間学を学び、自身を治め高める勉強をした。しかし、最近の人たちは薄っぺらな知識や情報の罠にかかり、古典に対する嗜好があまりにも不足している。自分なりに確固たる人生観や倫理観がないために、目の前の小さな利害関係にひっかかってことごとく倒れてしまう。
人類の精神文化の遺産である良質の本を通して世の中を見る目が開かれて人生の均衡を維持することができる。
何の足しにもならないテレビ番組や、新聞記事で頭をいっぱいにすることは、栄養のない食べ物を体にぎゅうぎゅうと詰め込むことのように、精神の害となる。