家庭訪問
私は静かな田舎の村に住んでいます。
曲がりくねった黄金色の田舎道の上をトンボが飛んでいます。トンボと一緒に私もハアハアと息を切らして走っていました。授業が終わるなり母が仕事をしている畑に向かって、一度も休まずに走って来たところでした。
「母さん。先生が、はあはあ、、、家庭訪問するって。」
「家庭訪問だって。どうしよう。もてなすものが何もないわ。」
白い手ぬぐいを頭に巻き、畑にしゃがんで仕事をしていた母は、大きくため息をつきました。
そして、あえて心配を振り払うように草取りを続けました。
私は地団駄を踏んで村の入り口のほうを見ました。
いつの間にか、先生は子供たちと一緒にそこまで来ていました。
「あ、大変だ。大変だ、、、」
仕方なく自分一人だけでもと、家に向かって走り始めました。
あたふたと畑の道を走って村に入って行きながらも、何をどうすればいいのか何の方法もなく胸だけがドキドキしました。
走って行きながら塀越しにチラッと見ると、先生は村の入り口のイッチョルの家にまず入って行きましたが、イッチョルのお母さんは、いつの間にかきれいな服を着ておいしそうな餅まで作って出していました。
「あ、これはどうしよう。ふぅ、、、」
私はどうしていいかわからず、ただ家に走って行きました。
あたふたと家に走って行き、縁側に座布団の代わりにきれいな風呂敷を敷いておきました。そして納屋に行き、母がしまっておいた種芋を何個か取り出して、かまどに火を入れ焼きはじめました。煙がしみてゴホンゴホンと咳をして、涙と鼻水まみれになりましたが、芋がちゃんと焼けないとどうしようという心配だけでした。
ですが、かまどの中がどうなっているかわからない先生は、すでに庭に入って来ていていました。
門のところに走っていって先生に挨拶をしました。
「先生。」
「お前一人か。お母さんは、、、仕事をしておられるのか。」
「はい。」
先生は縁側の風呂敷の上に座って、私は台所に行ってジャガイモを持ってきて先生に差出ました。
「これを召し上がってください。先生。」
「こいつ、芋を焼こうと、顔が真っ黒になったな。」
炭が黒くついた私の顔を見て先生はにっこり笑いました。
「おいしいね。お前も一緒に食べよう。あぁ、おいしい。」
「へへ、、、」
あせっていた気持ちが、先生の笑いで徐々にほぐれていきました。
ですがこれがどうしたことか、私も芋の皮をむいて一口かじった瞬間、舌の端がピリッとしました。外側だけがやっと黒く焼けていましたが、中は焼けていなくてザクザクしているジャガイモ。何かを感じた先生はすばやく言いました。
「大丈夫だ。ジャガイモはこうやって焼けていない方が栄養がある。」
先生がそうやって焼けていないジャガイモを2つもおいしそうに食べました。
ちょうどその時、母が帰って来ました。
ですが、先生を見て門の外にすばやく引き返し隣の家に行ってしまいました。汚い格好が恥ずかしかった母。
「お母さんかい。」
私は何も言えないでうつむき、先生はそれ以上聞く代わりに私の手を握ってくれました。何も言わないで、ずっと。
庭に咲いた背の高いひまわりがニコニコ笑って私たちを見ていました。