たき火の友情
刃のような風に雪まで舞う、ある寒い冬の日でした。
私は家の近くにある市場に行くためにしっかりと武装して家を出ました。ところが、市場に行く途中、家の建て直しをしている現場で、おばあさん一人と現場の人たちが小さないさかいをしているのを見ることになりました。
「ちょっと、これを拾わせて下さい。」
「ダメですよ、おばあさん。」
「おばあさん、ダメだと何回も言ったじゃないですか。どうかもう行って下さいよ。ね。」
地面に落ちている木材の切れ端を拾っていこうとするおばあさんと、危ないからダメだという作業員の間の小さないさかいのようでした。作業員たちがおばあさんを止めたのは、間違って事故でも起こったらと心配したからの様でした。
「今でも木を燃やす家があるのかしら。」
それに身なりもちゃんとしたおばあさんが、燃やす木を求めて危険な工事現場に行かなければならないなんて、その身の上がかわいそうだったけれど、忙しい私は冷たく吹く風と雪の中を足早に歩いていきました。空っぽだった買い物籠がいっぱいになった頃、玄米を買いになじみの露天に行きました。缶のストーブに火を燃やして厳しい寒さに耐えている露天商のおばあさんは、私を見るなりうれしそうに呼びました。
「いらっしゃい。とても寒いでしょ、こっちに来て少しあったまって行きなさい。」
缶のストーブの前に座って私はびっくり驚きました。少し前まで工事現場で木を拾っていたおばあさんが露天のおばあさんの横に座っていたからでした。そうして私は二人の事情を聞くことになりました。
はじめ、ふたりのおばあさんは露天商とお客の間でしたが、友達になったのでした。工事現場で会った身なりのちゃんとしたおばあさんは、子供たちのおかげで豊かに暮らしている人だということでした。
「あら、一日中動くこともできないで、どんなに寒いかしら。」
おばあさんは、冬の寒さに震えながら道端に座っていなければならない友がかわいそうで、工事現場を覗いては燃やすものを探していたのでした。私はなじみになったことで情けをかけてやったと思っていたのですが、、、、。そのおばあさんは困っている隣人の冷たい体と寒い心までもぽかぽかと暖かくしてやっていたのでした。たき火のようにほのかで暖かい二人の友情に、私の心までぽかぽかしていく冬の午後でした。