知り合いに純愛至上主義の人間がいる。この映画はおススメで、グッと「来る」らしい。何が来るのかわからないが、Netflixになかったので、数年そのままにしていた。
まずもって見る前から疑問があった。出演者の名前を見て、(きの)「生田斗真が漁師ィ?そんな生っちろい漁師がいるわけがない」首の後ろを見せてみろってんだ。
(知人)「本物のガッツ石松のような奴が出てきたら恋愛映画にならないだろう」
(きの)「ぐっ」確かに。正鵠を射た返しで納得した。
先日、ふと関連動画に出てきて、あれ?あるんだ、と思い見てみることにした。そして、ストーリー以前の疑問は容易に解消された。
釧路。
ものすごく気温の低い所だ。北海道の中でもオホーツク海気候で夏でも気温が上がらない。そこで昆布を収穫していた。それなら白くてもいいだろう。なるほど。勝手に千葉の方の話だと思ってた。
題名のハナミズキは北米でも咲いているから緯度的にはあり得る。しかし、映画に象徴的に出てくるあの木はハナミズキらしくない。胴体が太すぎるし、ハナミズキはもっと枝が直角に伸びる。
まぁいい、ケチばっかりつけててもしょうがない。しかしね、高校生が短いスカートで雪の日に電車から途中で降りて歩いて帰ろうとしている。(生田)「風邪ひいちゃうぞ」ていうか凍死しないか?釧路の人間はことさらに強いのか。
なんだかめんどくさくなって晩ご飯を食べに遠ざかった。気を取り直してまた帰ってきて見始める。こんなことをくり返して合計で4時間以上かかって見た。だいたい妖怪が1匹も出ないじゃないか。
早稲田大学への道のり:
進学した彼女を追い上京する漁師。「タカタノババで待ち合わせ」と書いたメモを持って駅に立っていたが、次の瞬間自力で大学まで来てしまった。
How?
住んでたからわかるが、結構遠い。漢字もわからないような人が歩いて行ったのか。まぁ1本道といえば1本だが。タクシー?うちの側は通ったかい?
そして、いろんな校舎がある中、おそらくメインキャンパスの門から入ってすぐにお目当ての人物を見つける。さすが研ぎ澄まされた感覚だ。
なぜ、この大都会にクーラーボックスを持ってやってきたのかね。まさかその中身は今朝取ったばかりの生魚では?するといきなり通行人と喧嘩を始めた。殴られるたびにその箱から魚がいっぱい飛び出してくるのではないかとヒヤヒヤした。
顔が血だらけのまま帰る。野良猫のオスのような恣意的なふるまい。幸い、中身は生ものではなく手製の船の模型だった。プレゼントに木彫りのオブジェをくれる彼氏って、実際問題どうなのか。
そして、やっぱり余計なお世話ながら、この、手作り感満載の作品を堂々とくれて道行く人と即ケンカになる地元の漁師がもし生田斗真の顔をしていなかったとしたら(例えば斉木楠生の燃堂のような見た目だったら)、この物語はどうなってしまうのかと行く末を心の中で案じた。
現実:
その後、なんだかんだあって漁師は安っぽい菜々緒のような人と結婚して嫁呼ばわり。漁協からの融資が受けられず破産して離婚してどんどん下世話になっていく。あの参考書を渡したあたりの初々しい特別感はどこへ。
船の行方:
一番解せないのが船の模型の所有権。まず、もらっておいて返すとは失礼ではないのか。それをいつか見るかもしれないところに飾っておく意図とは。本人はマグロ漁船に乗って行ってしまった。あれで彼女が全く見つけなかったらどうするのか。
歌は好きだ。独特の世界観があって歌詞のいちいちに意味がありそう。この歌にインスパイアされての映画らしいが、歌っている本人はどう思ったのだろう。自分の描いた世界と違うと思ったのか、それともこういう解釈もありと思ったのか。
母親の薬師丸ひろ子がいい味を出していた。昔はただのアイドルのような存在だったが、今は風格があり存在感がある。よく考えたら、物語の中でこの人が一番恋愛至上主義だった気がする。
人に薦められた話は、極力見てみようと思う。見ても疑問点しか湧いてこない時もあるが、見識を広める、価値観の多様性、まだ見ぬ何かが分かるようになるかもしれない、そう思って見ている。