これについては、腑に落ちない部分がありました。
バフムトについて最初にそう思いました。
去年の3月ごろ、あるいはもっと前に「バフムトは軍事的要衝でない」と言う意見がチラホラとありました。
私も最初そうなのだろう・と思っていました。
それを根拠に去年の3月バフムトへのロシア軍の攻撃が激化した時にバフムトを放棄して、戦術的撤退をしてウクライナ軍の損失を回避するべきだ・との意見が多くありました。
部分的には、その通りです。
去年の3月、ワグネルとのバフムトでの市街戦が始まるころにはバフムト防衛は、ほぼ不可能になっていたからです。
ウクライナ軍の戦術的誤りは、バフムト市街北東郊外のソレダルSoledarをロシア軍に制圧されたことです。ソレダルSoledar方面の陣地や防御ラインの作り方が貧弱だから制圧されました。
今考えるとこの時点でバフムトの攻防戦は、ウクライナ軍が不利になりました。
その後、バフムト市街の北部をロシア軍に完全に制圧されました。その結果、補給路である幹線道路のM-03を失いました。北の軍事的拠点のスラビャンスクСлов'янськからの補給が出来なくなりました。補給路を1本失うと言うことは、短期的には補給量が半分になると言うことです。
結果として市街の東の郊外からワグネルが攻撃して、その後はウクライナ軍の防御は、脆くズルズルと後退しました。
バフムト市街放棄論が言われたのは、その頃です。
市街に迫られた時点で、70%程度ウクライナ軍が負けているからです。
その後ウクライナ軍は更に押し込まれて、市街の郊外西に防御ラインを作ってチャシブ・ヤールChasiv Yarを拠点にして何とか持ちこたえてチャシブ・ヤールChasiv Yarの防衛には成功しました。
バフムト市街とかなりの兵員を失いました。
この点は、今も批判されています。
結果論を言えば、ソレダルSoledarを失ったのがウクライナ軍の敗因です。アウデイーイウカでも同じ間違いを犯して市街が陥落しました。
これは、バフムト攻防戦の概要であり日記の中身とは違います。
※バフムトの軍事的要衝としての評価が本題です。
一部の専門家は、バフムトには軍事的要衝としての価値がない(少ない)と言いました。
しかし、その後日記を書いているうちに気が付いたのはバフムトから北部ドネツクやハルキウ州南部へのアクセスの良さです。北部ドネツク州の軍事的要衝への進撃路があります。
理由は幹線道路が集まり分岐していく交通の要衝だからです。
T-0504を西に行けばコンスタンチノフカКостянтинівкаです。T-0513を南に下るとゴルロフカГорлівкаです。
M-03を北西方向に行くとスラビャンスクСлов'янськとリマンЛиманに行きつきます。
バフムト西のチャシブ・ヤールChasiv Yarからは、脇道を通ってクラマトルスクКраматорськに行くことが出来ます。
北東方向の道T-1302は、ルハンシク州のリシチャンシクЛисичанськとセベロドネツクСєвєродонецькに通じています。
つまりバフムトを制する者は、北部ドネツクを制することが出来ます。
普通に考えるならバフムトは、北部ドネツクの最重要拠点と言えます。
ロシア軍が大きな犠牲を払ってバフムトを制圧した理由です。
※一方でアウデイーイウカを大事な軍事的要衝だという人もいます。アウデイーイウカは幹線道路H-20を塞いで北にあるコンスタンチノフカКостянтинівкаとの交通を遮断しているだけで、それほどの軍事的要衝と言うわけでもありません。単なる一軍事拠点です。あった方がいいけれど無くても何とかなります。
ロシア軍が、かなりの犠牲を払い強引に制圧したのは政治的な意味合いが強いと思います。ここにウクライナ軍の拠点があると、ドネツク市が榴弾砲で砲撃されます。これはロシア軍のメンツにかかわりますから、大統領選挙の前に無理やり制圧したのだろうと思います。
むしろ軍事拠点としては西に行く道路N-25を抑えていたマリンカMar'inkaの方が重要度は高いと思います。ドネツク市から西への進撃路が開けました。
と言うように考えてみると軍事的(または戦略的)要衝は道路がたくさん集まり交通の要衝と重なる部分が多いです。もう一つは地形です。高い位置にある軍事拠点は防衛しやすいという意味で重要な軍事拠点になります。
バフムト西のチャシブ・ヤールChasiv Yarが、これに当たります。
チャシブ・ヤールChasiv Yarが、コンスタンチノフカКостянтинівкаとクラマトルスクКраматорськへの進路を塞いでいます。
そこを失うと拙いことになるのが軍事的要衝です。
非常に拙いことになるのが重要度の高い軍事的要衝です。
バフムトは、北部ドネツクの要の位置にあります。
バフムトをどっちが掌握するかで有利と不利が逆転します。
※関連記事目次
「中立の視点で見るウクライナ紛争」の目次②
https://blog.goo.ne.jp/kitanoyamajirou/e/e2c67e9b59ec09731a1b86a632f91b27