ウクライナ紛争が起きてみると、これまで気にもしなかった事が色々見えてきます。関心がないと分からない事が沢山あります。
その一つに旧ソ連諸国の社会構造があります。
旧ソ連諸国の社会の大きな特徴は、腐敗と汚職と縁故主義です。その最大の社会がロシアです。ベラルーシも同じ傾向がありますし、ウクライナはミニ・ロシアと言っても良い状況でした。
これまでウクライナが西側諸国から受け入れられなかったのは、その社会的な汚職と腐敗と犯罪の蔓延が大きな理由です。共産主義から資本主義へ変わった国には、移行のルールがありません。国有財産の不当に安い払い下げが、新興財閥を生み出します。あるいは、許認可の強い分野のビジネスも同じです。有力者にコネのあるものが優先されます。結果として社会的な汚職と腐敗は、そのまま引き継がれてしまいます。
法律に為政者の意思が優先する社会です。人治主義と言うべきですね。ロシアは、その極端な社会です。独裁者の意向が、法律です。独裁者の意向の上の法律は、ありません。
そして政治体制の移行期には無秩序と混乱が生じます。犯罪組織が蔓延します。これも残ります。特に港湾のある地域では、ロシアとウクライナに犯罪者のネットワークがあります。ウクライナのオデーサは、有名な犯罪都市です。
このような状況は、長く続くほど既得権と柵が生まれますから改革が困難になります。
西側諸国のウクライナ支援の条件は、このような悪しき社会を改革して民主主義的で法律による政治を行うことです。民主主義と汚職や腐敗も、ほぼセットです。金権政治がその最たるものです。それを言うなら、アメリカなど金権政治そのものにも見えますが?
ともあれ、ウクライナの社会的汚職と腐敗は目に余るものがあります。ロシアのウクライナ軍事侵略は、ウクライナに社会改革のきっかけを与えました。それを実行しなければ、ウクライナは西側からの支持や支援が受けられません。嫌でも社会改革を行う必要があります。戦争は大統領に戦時の大統領として大きな権限を与えます。ウクライナ国民は、当然社会改革を望んでいました。それを既得権益や柵が阻害していた経緯があります。
そういったことを背景に戦争開始後は、ウクライナの大統領は腐敗と汚職の追放に取り組んできました。それを進めて行けば、やがて身内にも手を付けざるを得ません。大統領の周辺にそのような人々が、残っていれば国民は納得しないでしょう。
ウクライナ大統領の元後援者を逮捕、勾留
2023.09.03 Sun posted at 10:11 JST
https://www.cnn.co.jp/world/35208585.html
ゼレンスキー氏が、大統領になる政治活動を最大限支援したのが、新興財閥の大富豪であるイーホル・コロモイスキー氏です。去年から捜査の対象には、なっていました。ついに裁判所から勾留を命じられました。刑事裁判にかけられるのは、もう既定路線のようです。もっとも刑事訴追をしにくい人物が対象になりました。つまり、全部捜査対象になると言うことです。例外は、許さないという意味でもあります。
そして、ロシアの軍事侵略開始の前年の11月に急遽、国防省に起用された、オレクシー・レズニコフ氏が退任するようです。2021年11月4日に国防大臣に就任しました。ロシアとの戦争を国防大臣として支えてきました。立派な人物だと思います。
しかし、国防省内の汚職の蔓延には無力でした。国防省内の汚職も摘発し、綱紀を正す必要があります。そのためには、オレクシー・レズニコフ氏が国防大臣の座にいては、何かと困ります。レズニコフ氏が罪を問われるのかどうかは不明です。少なくともこれから国防省の汚職を摘発するわけですから、功績のあるレズニコフ氏に渦中にいて欲しくは、ないと思います。
最も汚職の摘発が難しいのが、国防省です。ウクライナの社会改革も最終コーナーに差し掛かったように見えます。ここまでやれば、聖域も例外もなくなります。腐敗や汚職に関与したものは、必ず訴追され処罰される事が明白に示されれば、やがては少なくなると思います。何より裁判所が法律を執行できる意味が大きいと思います。法治主義の完成です。法治主義がなければ民主主義もありません。今、やっとその基本的な部分がウクライナ社会で形成されつつあるように見えます。
それが出来れば、ウクライナは真の意味で西側諸国に受け入れられるでしょう。