小学生の時、持っていた、或る児童文学の本が忘れられないでいた。
私が何十年も忘れられないでいたその作品は、「夜」という題名だった。
なるほどねぇ、まだ戦後の名残がある時代に書かれたものばかりだもの。どこか暗いのはそのせいだったんだー。
児童文学なのだが、なんだか暗く、寂しく、挿絵も少し不気味で印象が強かったのかな。
松谷みよ子の短編作品集だったことは憶えていたけど、タイトルを思い出せなかった。
だけどある時ふっ…と思い出した。
「かきのはっぱのてがみ」、うんうんそうだ。
中でも、家族のために働いている少年と少女が出て来て、少女が給料日に偶然再会した少年とお店でかき氷を食べた後、スリに遭って給料袋を盗られてしまう話が子ども心にあまりにも印象的だった。
確か結局盗まれたままで話は終わるのだ。児童文学なのに、夢も希望も無いじゃないのよそれじゃ。
当時読んだ小学生の私は、悲しさと怒りで何ともやるせない気持ちだった記憶がある。
あの話、気になる、もう一度読みたい!
と思ってAmazonで検索したら、あるんだなあこれが。
3000円ちょっとしたが、迷いなく購入。
私が何十年も忘れられないでいたその作品は、「夜」という題名だった。
この本が出版されたのは昭和46年らしい。定価590円。
この本に掲載されている短編は、昭和28年から昭和31年の作品らしい。
なるほどねぇ、まだ戦後の名残がある時代に書かれたものばかりだもの。どこか暗いのはそのせいだったんだー。
で、肝心の「夜」を読んだ。
すりに遭って、少年がしくしく泣きじゃくる少女に寄り添っている。
自分の給料が入ったら、少女に全部あげようとか思っている。
そのうち野良猫が現れて、まるで少女を慰めるかのように寄り添っている。
なんとなく和んできて、最後は少年と少女は手をつないで笑い合って話は終わっている。
ふむふむ、これは淡い恋の話だったのね。
小学生の時からずーっと納得がいかないできたが、長い時を経て解決。
うーん、それにつけてもにくっきスリよな。
いたいげなこの少女、結局ひと月タダ働きをしたことになるじゃあないか。
この作品が書かれたのは昭和29年。
中学を出て、家族のために働きに出ることは珍しくない時代。
久しぶりに読んだけど、やっぱり切ないわ。