訪問入浴のとき、皆さんが母に喋らせてあげようといろいろ話しかけてくれます。
「
昼間は何してるの? なにか手作業とかしてますか?」
母 「
なーんにも~ してないよ~」
私 「
デイサービスに行けばね~ いろいろ」
「
あ そうか~ デイサービスでどんなことするの~? おしえて?」母 「
釣り(ゲーム)
とかね」
「
へえ! 釣竿は? どんなの? “魚”にフックが付いてて引っ掛けるの? 魚の名前も書いてある?」
私 「値段が書いてあるんだって」
「
アハハ 値段かあ いいなあ。 いちばん高いのはいくら?」母 「
いちばん高いのはぁ タイ!」 (何円?) 「
30銭!」 (円でしょう) 「
サンマは安いよ!」
「
じゃあ金額たくさん釣った人が勝ちなんだ?」母 「
そお~でもない」
???
私 「
母は暗算が得意なんだそうで、他の方のも計算しちゃうらしいんですよ」
母 「
そう! みんなが計算する前にあたしが150円! 200円! て先に言っちゃうから、みんなびっくりするの。 速いなあ! 暗算は○○さんに頼もう なんて言うの。」
私 「2チームに分かれてゲームするらしいんですけど、そのチーム名も母が決めるんですって
」
「
何チームって付けるの?」母 「
ひまわり組とね、あさがお組」
「
へえ! ○○さんはスゴイなあ。 ムードメーカーだね! リーダーだね!」
(母はムードメーカーの意味はわからない)
私 「母は80代だからまだヒヨッコなんですよ(笑) 90以上100近いような方ばっかりなんだから」
「
そうか~ ツワモノ揃いなんだ~ ○○さんより “元気な”人いる?」
母 「
そりゃあいるさあ! あたしのこと、アンタは黙ってなさい! って言う人がいるんだ。 杖を 銀座で買ってきた杖 だって自慢するの。
(東京でも うちのようなイナカでは銀座なんて超高級な場所。 行くには電車や地下鉄を何度も乗り換えて2時間くらいかかるし余程の用事がないと行ける所ではない)
あたしたちが銀座なんて知らないだろうとばかにしてるんだ。 あたしだって銀座ぐらい・・ 行ったことある・・ よ
(ないと思うよ?
)
みんなもわざと、え~ 銀座で買ったツエ すてきねえ。 なんちゃってさ。 そのズボンもシャレてるけど、それも銀座で買ったの って聞いたら、 そうさ。ズボンも銀座さだって。 じゃあウワバキも
(デイでは利用者は室内では学校で履くような白いウワバキ(上履き)に履き替える)
って」
「
ガハハハ ウワバキも銀座だって」
母 「
ウワバキは銀座とは言わなかったよ」
「
ガハハハハハハ 面白い 面白いよ! ○○さん! 今度、銀座ってどこの銀座?って聞いてみてよ!」私 「そうだよねえ。 隣町の駅前の“銀座通り”かもしんないしね
」
「
あ~ 今日は面白かった! またデイ行ってそういう話、仕入れといてよ! 負けちゃダメだよ!」
入浴サービスの3人とも、気遣いではなく本当にお腹かかえて笑いながら帰っていきました。
こうして文字にしてしまうと面白みがわかりませんが、実際は母が寝たままたどたどしく話すし、まわりでツッコミ入れながらなので笑いどおしでした。
母も、
実は母はこの日は朝から落ち込んでいて、
(“こんな体で生きていても家族に迷惑かけるだけだ” という負のスパイラルに取り込まれる。 傍で一生懸命励まして
盛り上げても、また忘れてしまうのだ。 何十回も同じやり取りしてるとこっちも無気力になってしまう)
いたのに、入浴サービスの人たちと話したおかげで まさしくムードメーカーよろしく母は周りの人も自分自身も笑顔にしてしまった。
サービスの人と話す母はシッカリして見えて、家族の前でメソメソグシュグシュ言ってる時とは別人のよう。
それなりに気を使ってるってことでしょうね。
母は昔から、良くも悪くも太陽のような人でした。
大きく張りのある声は昔と変わりません。
自分だけ出掛けて帰宅すると、
「
この家はあたしがいなきゃあ火が消えたようだねえ! ハハハ!」
なんて自分で言っていました。
私は、母のような人が、心底うらやましい。
私は母とは正反対のような人間だから。
人前で話したりするのは苦手だし、目立つのも嫌。
人から関心を持たれることが居心地悪いのです。
どうして母の娘なのにこうなんだろう? と子供の頃から不思議でした。
人を笑顔にさせる、一種、天賦の才能を持つ人がいるんだと思うのです。
私にはそれがなかった。
まあ今はこうして人前で話さなくてもインターネットを介してコミュニケーションできるからあまり不便は感じませんが(笑)
以前、母をデイに行ってくれるよう説得した時も、このツボを押したんです。
「お母さんも知ってるとおり、私は昔から人前に出るのが苦手でしょ? 私ならとても無理。 でもお母さんは昔からどこへ出ても人を喜ばすことができたよね? だから私は家の中の仕事しとくから、お母さんは外で、
社交のほうで力を発揮してほしいの!」
て具合に。
実際にはもっとクドクドと語ってたんですが、我ながらこの説得はドンピシャでしたよ
長々となってしまいました。 すみませんでした