蒲田耕二の発言

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解任

2018-04-28 | 社会
日経ビジネスというのは変わったサイトで、一方に韓国をののしり倒してネトウヨ大喜びの「早読み深読み朝鮮半島」があれば、他方には日頃ネトウヨに攻撃されまくりらしい小田嶋隆のリベラルなコラムがある。

その小田嶋隆が今週書いている「華やかな敗北を見たがる人々」が、ワケの分からんハリルホジッチ電撃解任の謎を解き明かすと同時に、日本人の宿痾に近い国民性まで言語化していて面白かった。

オレは普段、この人の文章が好きじゃない。考え方に賛同できないからではなく、論理が回りくどくて読みづらいからだ。敵に攻撃の隙を見せないよう脇を固めると、どうしてもクドクド説明が長くなるんだろうけど。しかし、その長ったらしい文章を辛抱しながら読んでいくと、目からウロコのフレーズが次々現れる。

・サッカー協会の会長は60ヅラを下げたおっさんだ。その酸いも甘いも噛み分けているはずの還暦過ぎのジジイが……W杯を2カ月後に控えたタイミングで代表監督を解任するにあたって持ち出してきた解任理由が、言うに事欠いて「信頼関係が多少薄れてきた」だとかいう間抜けなセリフだったというこのあきれた顛末を……いったいどこの国際社会が失笑せずに受け止めるというのだろうか。

・世界を知っている戦術家である外国人監督は、世界の中の日本の実力に見合ったサッカーを構築しにかかる。すなわち、守備を固め、一瞬のカウンターを狙う走力と集団性を重視したサッカー……どうしても堅実でありながらも華のないチームになる。

・そして、彼(ハリル)が作ろうとしていた、地味で堅実で面白みには欠けるものの、3回戦えば1回は上位チームを食うかもしれないチームは、多数派のライトなサッカーファンには我慢のならないぞうきんがけサッカーだったということだ。

・ミッドウェーで一敗地にまみれ、ガダルカナルで壊滅的な敗北を喫したのち、自分たちの戦術や戦力がまったく敵に通用していないことを思い知らされたにもかかわらず、それでもわれわれは、自分たちの「美学」だかを貫いて、美しく散ることを願ったわけで、つまるところ、ウクライナに敗北したあげくになぜなのか華麗なパスサッカーを志向するに至ったわれら極東のサッカーファンの幻視趣味は、帝国陸軍末期の大本営の机上作戦立案者のメンタリティーそっくりだということだ。

ハリル解任に関しては、オレはいままでおおむね肯定的な意見しか読んだことがない。今朝の朝日にのっている記者会見の記事(ハリル氏、気づけば「裸の王様」)も、彼に冷淡なトーンだ。

オレ自身、小田嶋さんの言うライトな多数派のサッカーファンの一人だから、ハリルにも悪い点はあったんだろうな、ぐらいにしか考えていなかった。しかし真の問題は、現実を見て有効な対策に努める当事者と、現実を見ずに願望を追う野次馬とのギャップだった。そのことを教えてくれた唯一の記事がこれだ。

ついでに言うと、同じ今週の日経ビジネスに載っている遙洋子の「それでいいのだ、テレ朝女性記者。」も面白い。セクハラで非難されるたびに露呈する男たちの本性をあざやかに切り取っていて、これも見事な日本人論になっている。

「嫌なら行かなきゃいい」「言葉だけだ」なんて、オレもうっかり言ってしまいそう。気をつけなきゃ。

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