蒲田耕二の発言

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奴隷労働

2020-06-21 | 社会
60年代の公民権運動からオバーマの大統領就任まで、米少数民族の反差別運動は着実に成果を上げてきたと思っていた。故・中村とうよう氏なんか、米黒人は差別の苦しみから解放されたからマイケルの『スリラー』みたいな堕落した音楽をやるようになった、などと言っていたぐらいだ。

ところが、最近のBLMムーヴメントの激しい盛り上がりを見ると、それはどうも局外者の能天気な見方だったらしい。米黒人が置かれた状況は公民権運動の時代どころか、南北戦争以前から大して変わっていないことを『13th 〜憲法修正第13条』というビデオが明らかにしている。目からウロコの息を呑むようなドキュメンタリーである。

かつて奴隷解放でタダの労働力を失った米南部経済は、犯罪者に目をつけた。憲法修正第13条に、犯罪者は自由平等待遇から除外されるとの但し書きがあったからだ。そこで南部白人は、放浪、飲酒等々の微罪で次々黒人をしょっ引いて犯罪者に仕立て上げ、超安価な労働力として強制労働に従事させた。

この間、ハリウッドとメディアが映画、報道を通じて、黒人は粗暴で無教養、白人女性をレイプする強姦魔というイメージをバラ撒いた。トランプがこの手法に則って、移民をジャンキーの犯罪者呼ばわりしたのは、よく知られるとおりだ。

1970年代以降、刑務所が民営化されると、受刑者の数がうなぎ登りに増える。刑務所運営企業は、受刑者がいないと商売にならないからだ。そこで現在、アメリカの受刑者数は230万人。世界全体の25%だそうだ。言うまでもなく、その多くを黒人が占め、低コストの囚人労働に従事させられている。

こうして百何十年間、アメリカは世界一の経済力を維持するために、ひたすら黒人やヒスパニックら有色人種の人権を侵害し、搾取してきた。その事実を『13th』はこれでもかと突きつける。

BLMとは一人の黒人が警官によって殺害されたことだけを告発しているのではない。米黒人が日常的に人権と生存を脅かされ続けている現実から絞り出された、血を吐くような悲鳴なのだ。

これは太平洋の向こう岸の他人事ではない。日本でだって派遣労働だの技能実習制度だの、実質的奴隷労働がはびこっているではないか。皮肉なことに、コロナ禍で多少下火にはなっているらしいが。

あと、こういうビデオを見てトランプは許せん、アメリカの司法は狂ってるなどと息巻く連中が、元慰安婦や徴用工の問題になると、途端に「解決済み」「捏造」「歪曲」とか言い出すんだよね。

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