女装子愛好クラブ

女装小説、女装ビデオ、女装動画、女装記事などを紹介していきます。

恋歌というものは、 男が女の気持になって詠んだときにいちばんいいものができる。

2023年09月29日 | ★女装の本・雑誌
図書館の本棚で古い本ですが、司馬遼太郎対談集『8人との対話』を見つけました。
山本七平、大江健三郎、安岡章太郎、丸谷才一、永井路子、立花隆、西澤潤一、アルフォンス・デーケンの8氏です。
そのなかでの丸谷才一氏との対談で面白いやり取りがありました。

丸谷 「御門」が女みたいな存在ということで思い出すんですけれども、恋歌というものは、 要するに男が女の気持になって詠んだときにいちばんいいものができる。

たとえば百人一首に ある藤原定家の歌に、

来ぬ人を松帆の浦の夕なぎに
やくや藻塩の身もこがれつつ

これは待っているわけですから、女の歌なんです。 定家が女の身になって詠んでいる。
訪ね て行く男の立場では、こういう濃艶な恋歌ができない。


今回の富士子さん、九州女装旅行のしのぶさん、このお二人の文章にも怖いくらいの「濃艶」を感じることがありました。
まさに「男が女の気持になって詠んだときにいちばんいいものができる」の証左であるかもしれません。
それに富士子さんはKさんに抱かれたどうかは不明ですが、しのぶさんは毎夜おんなになって抱かれています。
夜明けを迎えるたびにさらに濃艶になっていったのでしょう。


男をやめてみた~癌になったので女装して恋をすることにしました~ 1 (エンペラーズコミックス) Kindle版



『この物語は実話に基づいています―。』 突然、主人公・渚素(なぎさ はじめ)を襲った癌という病気。 残された時間で彼が選んだのは「自分らしく生きる」というものだった。 男性という生まれた時に割り当てられた性別をやめて街に出ることで…今まで体験してこなかった事件が次々と渚に押し寄せる。 著者自らの体験を赤裸々に描いた極上のレインボーエンターテイメントコミック!


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美貌の男子高校生を愛人として囲った「鎌田実安氏」のモデルは誰?

2023年09月10日 | ★女装の本・雑誌
2021年6月8日に、小説『男を飼う』の文章を題材に次のコラムを書きました。
『鎌田実安は愛撫の前に必らず櫟弘一郎と一緒に入浴して彼の躰を隈なく洗い浄めながら......』

改めて梶山季之先生の文章を引用します。

『美貌の高校生・櫟弘一郎は、実業家で社会的地位もある鎌田実安氏から「君を援助したい」という申し出を受けました。そして、鎌田が借りてくれたアパートで「愛人」として暮らし始めたのです。

 男と男とが、愛し合う……。
 それは常識では考えられない世界であるが、現実には、存在するのだった。女性でありながら、女性しか愛せない人がいるように--。
 高校生の櫟弘一郎は、鎌田から抱かれ、接吻されたときには、正直に云って、ゾーッとした。
 だが、その愛撫を受けているうちに、次第に昂奮して行ったことを覚えている。
 相手は、女性ではなく、同性だと思いながらも、櫟弘一郎は、めくるめくような快感に、思わず躰をのけぞらせ、のたうち廻ったのだ・・・。

 鎌田と、櫟との愛人関係は、五年間つづいた。
 城南大学の演劇部員から、大東映画のニューフェイスに応募して合格し、卒業と同時に入社したとき、鎌田は彼のために背広を十着つくって呉れ、「そろそろ別れるときが来たようだね」
 と云って、自分から身を退いて行ったのだ。
 鎌田実安は、それから間もなく、胃潰瘍で死亡した。
 だから、櫟弘一郎が、鎌田の愛人として、幸福な大学生活を送ったことは、誰にも知られてはいない。
(中略)
 鎌田は、愛撫の前に必らず、彼と一緒に入浴して、彼の躰を隈なく洗い浄めながら、途中でたまらなくなったように、彼の躰の、そこかしこに接吻するのであった。
 そのあと二人は、バスタオルを腰に巻きつけたまま、少量の酒を飲んだ。
 これは昂奮をたかめ、理性を減じるのに役立ったようである。
 接吻・・・愛撫。そして愛咬。
 相互〇〇〇〇からフ〇〇〇〇ヘ。
 ……擦弘一郎は、そのときになると、もう我慢しきれなくなるのだった。
 〈パパ! ああ、たまんないよ!〉
 〈ああ、死にそうだよ、パパ!〉
 そんな彼の呻き声が、不図、耳朶の底で甦って来る。
   出所『男を飼う 鞭と奴隷の章』梶山季之著1969年 集英社刊
    諸般の事情から引用者が一部を伏字にしました。







昭和時代、東京にあったアマチュア女装者の秘密結社「富貴クラブ」の会長は西塔哲氏で、鎌田意好というペンネームで小説やリポートを書かれていました。

鎌田意好は(かまだいすき)ということからペンネームにしたということです。
私が国会図書館で書庫から借り出した風俗奇譚やくいーんにも、鎌田氏の原稿が掲載されていました。
こうしたことは最近知ったのですが、改めて上記の小説を読むと、高校生と一緒にお風呂に入って性感を高めることをした実業家の名前は鎌田実安氏となっています。

梶山季之先生も西塔哲氏に取材をされたと思いますので、そのお名前を小説のなかで名字につかったのでしょう。
私が気になったのは、名前の「実安」です。
まあ普通に読めば「さねやす」です。
ただそれでは面白くない。
「実安」の別の読み方はなにがあるか?
びあん
じつあん
じっあん
飛躍した読み方だと
「じょあん」までいけるでしょうか。

ムリクリの推理がゆるされるのなら、梶山季之先生はこのころからJ事務所の未成年に対する性加害のネタをしっていたのかもしれません。
そこで美貌の高校生と性行為に及ぶパパの名前にJ氏を連想させるような名前を付けた...........................。
いまとなっては、梶山季之先生もJ氏もお亡くなりになっているので、検証の仕様がありません。

まあ、この程度の素人推理は笑い飛ばしてください。





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女装者25人の別冊くいーん 7号 

2023年08月16日 | ★女装の本・雑誌
昨日午後、前から行きたかつた国立国会図書館にいってまいりました。
公共施設ですので、お盆休みとは関係なく開館しております。
そこで探したかったのは、「くいーん」「別冊くいーん」「風俗奇譚」「奇譚クラブ」のバックナンバーです。

入館してまず所蔵図書・雑誌の検索機で雑誌を予約。
オンラインで出庫依頼をします。
大体20分くらいで出庫されますので、カウンターで受け取ります。
それをもって閲覧室に行きます。
残念なことにスマホのカメラ機能は使えません。
そこで複写したい記事については、複写依頼書をオンラインでつくって、該当部分にシオリをはさんで、複写カウンターに申し込みます。
これも30分くらいで完成です。
A41枚 27円ですから、安いものです。

そして、ここで念願の別冊くいーん 7号(1987年10月)をじっくりと読むことができました。
「女装告白手記~25人の体験実話」です。


女装への道とレズビアン結婚……………8
星野奈保子
腰巻フェチィストの愉しみ………………12
群馬紅夫
お化粧と痴漢と私…………………………16
戸田景子
背徳の女装水 沢千春……………………19
女装一路に 佐野夏子……………………24
妻公認のもとで 志乃……………………29

彼女といっしょのルンルン女装…………33
可愛あさみ
理想の女性を夢見て 珠美………………37
澄子さんとデート 澄子…………………42
憧れのブルマーとセーラー服……………45
伊藤つかさ
いじめられっ子 白井美代子……………50

忘れ得ぬ思い出 水野しのぶ……………54
花嫁衣裳に包まれて 小野玲子…………60
バストパッドは甘食パン 戸川昌子……65
女装一人歩き残酷物語 キャンディ……69
ワタシの場合 中島めぐみ………………72
礼のアクセサリー 栗田美穂……………76
女装旧婚旅行 山本玲子…………………79
家族と会社と女装 神田五月……………82

私のハレンチ体験記 のぶ子…………....86
流れのままに 田町桂子…………………92
ときめきのワンピース 恵夢……………95
和装美女の冒険 久美子…………………98
離れられないスリップの感触……………100
ラプソディ・トランスヴェスチカ………117
秋水香子    
     


いやあ、素晴らしい告白手記のオンパレードです。
お堅い国会図書館のなかですが、私は思わず読みふけってしまいました。
気になった記事は「風俗奇譚」「奇譚クラブ」の分も含めて、あとでご紹介しますね。



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終戦記念日

2023年08月15日 | ★女装の本・雑誌
本日は終戦記念日。
先の大戦で亡くなられた皆様のご冥福をこころよりお祈りいたします。

今年の2月24日に『ペリリュー~戦場のゲルニカ~』をご紹介しました。
ここで゛性別違和感を持つ若い兵士の話を書きました。
終戦記念日の今日、平和を願って改めてこの記事を再録いたします。


『ペリリュー~戦場のゲルニカ~』は昨年から読み込んでいる本です。
大人買いをするタイミングを失しましたので、ブックオフに行ったときに本棚にあるものをコツコツと入手しています。
昨日読んだのは第6巻。

22歳で漫画家志望の田丸一等兵が主人公。米軍に制圧されたペリリュー島で田丸他の日本兵は隠れながらも、米軍物資を調達しながらも米兵と戦います。
その田丸たちと共に戦う中に泉一等兵がいます。
ある日、田丸たちは米軍物資を盗み出しました。
そのなかには食料や下着があり、そしてどういうわけか口紅もはいっていたのです。
「いらん」と言って捨てられた口紅。
泉はそれを拾います。
そして、仲間たちから離れたところに行き、口紅をつけるたのです。
鏡はありません。
鏡とするのは鉄兜のたまった水で、そこに映る自分の姿...。
狂ったように激戦が繰り返される1945年3月のペリリュー島。
性的違和感を持つ泉にとって口紅をつけられたことは、束の間の、本当に束の間の安らぎだったのです。
しかし泉は故郷の地を踏むことはできませんでした。

昨日は天皇誕生日。
天皇陛下の父親、上皇陛下は上皇后陛下とともにパラオに行き、激戦のペリリュー島へ弔意を捧げました。

ペリリューの土となった泉一等兵。
帰ってきたかったよね。
お化粧もしたかったよね。
女性の服も来たかったよね。
戦後の日本で自由に生きたかったよね。







出所『ペリリュー~楽園のゲルニカ~⑥』 見出し画像もです



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『1968年の女装美青年』について

2023年08月13日 | ★女装の本・雑誌
おはようございます。
お盆休暇が始まりました。
とはいえ蒸し暑いですね。
埼玉県地方は未明に土砂降りの雨でした。
そして台風も来ます。
お身体にお気をつけてお過ごしください。

『1968年の女装美青年』についてですが、『美男奴隷』のこの部分を思い出したのは、ジャニー喜多川さんについての報道からです。
喜多川さんがどのような行為をされたか、私は正確なことを知らないので言及しませんが「報道されているようなことをどこかで読んだな」と思い出したからです。

顔に化粧をしてやり、
カツラをかぶせ、
ストッキングやハイヒールをはかせ、
ベッドの上で彼の飽くことのない、
ねばっこい愛撫がはじまる。
若者たちは、
女のように声を忍ばせて泣いた。


梶山季之先生は週刊文春創刊時、梶山軍団という取材グループを率いて、トップ記事を書いていました。
その取材力の高さ、記事の正確性と読み物としての面白さは出版界でも評価が高かったそうです。
この『1968年の女装美青年』も梶山季之先生の情報網で得たネタまたはタレコミから着想を得たのでしょう。
まあ、それがジャニー喜多川さんの行為のタレコミではないとは思いますが.....。

しかし、1968年当時、こうした女装をテーマにしたポルノ小説を書く梶山先生の先進性に改めて驚きます。
2023年の女装美少年・女装美青年・女装美壮年のかたは、このお休みに『美男奴隷』を読んでみてください。

よい夏休みをお過ごしください。



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1968年の女装美青年④~顔に化粧をしてやり、カツラをかぶせ、ストッキングやハイヒールをはかせ、ベッドの上で彼の飽くことのない、ねばっこい愛撫がはじまる。若者たちは、女のように声を忍ばせて泣いた。

2023年08月10日 | ★女装の本・雑誌
アルゼンチンで舞台女優に囲われていた藤島安雄は日本に帰ってきます。
そして、東京で違った形で自分の欲望を満たすのです。

彼は、日本へ帰って来た。
以来、彼は”女装”を捨てて、男になり切ろうと努力している。
しかし、女をどうしても、好きになれないのであった。
目下、彼の趣味は、新宿あたりに出て、チャーミングな高校生ぐらいの男の子を探し、言葉巧みに自分のアパートヘ連れ込むことである。
それも、童貞の男の子に限るのだ。

酒を飲ませ、彼の描いたワイセツな絵画をみせる。
理性をうしなわせ、そして欲情の火をかき立てるのである。
一緒に風呂にはいり、異性を知らない部分に彼は悪戯をする。
若者は、はじめいやがる。
しかし、安雄が接吻しだすと、抵抗をやめてしまう。

湯から上がると、あとは安雄の言いなりである。
顔に化粧をしてやり、カツラをかぶせ、ストッキングやハイヒールをはかせ、ベッドの上で彼の飽くことのない、ねばっこい愛撫がはじまる。
若者たちは、女のように声を忍ばせて泣いた。

なかには、
「あっ、ママー ママー 死にそうだよう、ママー」
と、悲痛な叫び声をあげた者もある。

安雄は、女装した美少年たちを、愉悦の絶頂近くまで導いては愛撫をやめ、しばらく休憩しては、再び愛撫した。これを繰り返すのだ。
少年たちは、気も狂わんばかりに、ベツドの上をのだうちまわり、ハイヒールの爪先を痙幸させ、ひと思いに殺してくれと哀願した。
それを眺めるのが、安雄には愉しいのであった。

相手は若いだけに、一度、その甘美な歪んだ愉悦を知ると、一夜に何回も何回も、それを求める。
安雄は、一夜限りで、あとは突き放した。彼から受けた愛撫と、複雑なテクニックとが忘れられなくて、彼のアパートの周囲を、うろうろする者があとを絶たなかったが、彼は冷たくはねつけた。
「ぼくは、浮気は一回ぼっきりの主義でね。でも、きみの童貞を奪ったのは、このぽくだということだけは忘れないでくれたまえ……」
と言って。

出所『美男奴隷』(梶山季之)

いまであれば絶対にアウトである藤島氏の行為も1968年は咎められなかったのでしょうか。
1968年の東京、美少年にとって危険で甘美な罠が待ち受ける危ない都市だったのかもしれません。
美少年を女装させて弄ぶ藤島安雄氏は1968年において36歳という設定ですから生年は1932年。
ちなみに故ジャニー喜多川氏は1931年生とのことです。


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1968年の女装美青年③~カツラをかぶり、ハイヒールをはいて、ハンドバッグをもつと、どこからみても藤島安雄の姿はない。 女である。それも美貌の……。

2023年08月08日 | ★女装の本・雑誌
すみません。
8月8日のブログ記事は重複していました。
お詫びして、削除いたします。
こちらが「1968年の女装美青年③」です。

1960年代中盤、ハワイで女装の虜になった藤島安雄はサンフランシスコにわたります。

サンフランシスコの百貨店で、安雄は女装のための、いろんな品物を買い入れた。
化粧道具。カツラ。下着。
既製の婦人服。そして靴……。
夜になると、彼はバスにはいって髭をそり、入念な化粧にとりかかる。
足の毛は、毎日、そったあと、脱毛クリームをすり込んだ。
化粧が終わると、サポーターで邪魔なものを固定する。
ストッキングをはく。
パッドを入れて、ブラジャーをつける。
スリップ。そして婦人服。
カツラをかぶり、ハイヒールをはいて、ハンドバッグをもつと、どこからみても藤島安雄の姿はない。
女である。それも美貌の……。
安雄は、バッグに部屋のキーをしまい込むと、いそいそと外出した。

坂の多いサンフランシスコの街。
ヒールを鳴らしながら、歩いていると、途方もなく彼は興奮してくるのだ。
サポーターの中身が、熱く怒張するのを感じる。
白人の男が、女と思い込んで、誘いかけてくる。
彼は、恍惚となる。
しかし、仲間以外は敬遠した。
そして仲間だと知ると、彼から近づいて、声をかけた。
相手はびっくりし、やがて喜悦した。
ある男は、大型の車の中で彼を求め、五百ドルのお小遣いをくれた。
別のある男は、自分のアパートヘ彼を連れ込み、
「同棲してくれ」
と哀願した。
事実、安雄はメキシコでは、ある富豪の囲われ者となって一年あまり暮らし、ブエノスアイレスでは、逆にある舞台女優の愛人として過ごしている。
その女優は、彼にとっては最初の女性であり、女装した彼に、自分は男装して彫むのであった。
しかも、彼女はサディストで、彼にしいたげられることの快感を、教えてくれたのである。
ある意味で、彼の女装趣味は、放浪生活の糧を得るためであった……と言えるかもしれない。
彼が、自分のそんな風変わりな趣味から、ぷっつりと足を洗って、日本へ帰る気になったの一つには三十という年齢に連して、いつまでも美貌を誇れなくなったことと、それに男でありながら、女装して男に可愛がられているという、いわば受け身の生活が、いやになったからである。

出所『美男奴隷』(梶山季之)

ここに時代を感じます。
今であれば30歳はまだまだ美人女装子でいられますが、1960年代中盤は30歳は「老い」を感じる年齢なのですね。


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1968年の女装美青年②~濃い目のルージュを塗り終わると、鏡の中にいるのは、別人のような美女である。 〈これがぼく!〉 安雄は、感動していた。

2023年08月07日 | ★女装の本・雑誌
承前です。
1960年代、ハワイ旅行は夢の夢でした。
しかし富豪の3男である安雄は旅することができます。
そしてそこで知り合った建築家・ウィリーに安雄は女装させられます。


ウイリーは、彼を半裸にして、自分から入念な化粧をほどこしはじめた。
下地をつくり、目ばりを入れる。
眉墨を刷く。
もともと美男子であった藤島安雄は、たちまちにして綺麗な女性の顔にと、変化していった。
濃い目のルージュを塗り終わると、鏡の中にいるのは、別人のような美女である。
〈これがぼく!〉
安雄は、感動していた。
まるで嘘のようであった。

ウイリーは、恍惚として彼を眺め、
「カツラをかぶるかい?」
「ええ、喜んで!・」
彼は、声を弾ませた。
ウイリーは、大きなトランクを持ち出して来た。
「これはね、ぼくの財産なんだ!」
白人の建築家は言った。
「というと?」
「開けてみたまえ」
ウィリーは微笑する。
トランクの中には、いろんな女性用品がはいっていた。
ブロンドや、ブルネットのカツラ。
さまざまな飾りのついたパンティ。
色の鮮やかなブラジャーや、スリップ。
白、赤、黒のエナメルのハイヒールが三足あり、いずれも新品であった。

安雄は、ブロンドのカツラを、ためらうことなく頭にかぶった。
「美しい! 女、いや、それ以上だ」
ウイリーは、彼にブラジャーをつけ、ストッキングをはくことを要求した。
「靴も、はいてくれないか……」
 ウイリーは言った。
 ハイヒールは少し大きかったが、鏡の前にたたずんだ安雄は、それこそ、うっとりとなる。
〈ああ! 女になった〉
彼は、そう叫んだ。

股間の邪魔なものがなければ、文句なしに女である。
安雄は、そんな姿で、ウイリーの愛撫をうけた。
生まれて初めての体験だけに、刺激もつよく、興奮はいやが上にも増すばかりである。
藤島安雄はそのとき、外国へのがれて来た甲斐があった……と、しみじみ思ったのである。

出所『美男奴隷』(梶山季之)




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1968年の女装美青年~寝室にはいると、「きみを、女にしたい」と言った。安雄は、胸を弾ませた。

2023年08月06日 | ★女装の本・雑誌
おはようございます。
埼玉県地方は快晴です。
そして蒸し暑い。
みなさま、お気をつけてお過ごしください。

週末、梶山季之先生の『美男奴隷』を読み返していました。
ヒロイン・千絵に女装させられる美少年・黒田英二と英国少年・ジャックについてこのブログで書いてきました。
しかし、もう一人、女装者が登場しています。
藤島安雄です。
千絵がお手伝いをしている大富豪・藤島家の3男。
36歳の若きイラストレーターで、海外放浪を終えて帰国してきました。
千絵はある思惑をもって安雄を誘惑します。
大邸宅の自室に招き入れ、唇を安雄に寄せます。
しかし......

……それは稚拙としか、言いようのない、下手な接吻だった。
 藤島安雄は、千絵の唇を吸いながら、歯をガチガチ鳴らしたりしていたのだ。
 三十六歳にもなりながら、奇々怪々な話ではあるが、実は、藤島安雄は日本の女性に触れたのは、そのときが二回目だったのだ。
 いや、女性と唇を合わせたのが、生まれて二回目だった……といったほうが正確であろう。
 藤島安雄は、どうしてか、女性を好きになれない性質の人物だったのである。
 と言うことは、つまり同性愛の傾向があったわけだ。
 彼が美大を卒業後、七年間も中南米を放浪したのは、いわゆる白人の男性に憧れたからであった。
 いや、白人男性の逞しい胸に、女装してかき抱かれたい……という願望のために、彼は日本を出たのだ。
 だれも知らない外国なら、恥も外聞もない。藤島安雄はそう思ったのである。

 はじめてハワイに行き、安ホテルに一泊したとき-彼は、ひとりの白人の青年からプロポーズされた。
 ホモの世界は、言語の不要な世界である。
 何国人であろうと、目と目が合えば、それで、〈あ、仲間だ……〉 とわかる不思議な世界であった。
 青年は安雄に近づいて、
「ぼくの家に、遊びに来ないか?」
 と言った。
 青年は、ウイリーという名前で、建築家であった。ハワイには仕事で来ているのだと言う。
 安雄は青年に従った。
 ウイリーは、かなり高級なホテルに暮らしていて、寝室にはいると、
「きみを、女にしたい」
 と言った。
 安雄は、胸を弾ませた。
 -女装。
それこそ彼の最大の願望だった。
女になり切って、男から愛撫されることが、安雄の憧れであったのである。


出所『美男奴隷』(梶山季之)




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M男ぶちさんと「風俗奇譚」

2023年08月03日 | ★女装の本・雑誌
おはようございます。
今日もいい天気ですね。
昨日は渋谷で仕事。
歩き回りましたので身体が熱い。
堪らずコンビニに飛び込んでアイスを買いました。
おっさんがコンビニ店頭でアイスをかじるという図でありました。
でもそれが許される暑さですよね。

昨夜、「風俗奇譚」で検索をかけていたら、「M男ぶちblog」がヒットしました。
最強ともいえるM男のぶちさんが、Mに目覚めた少年期から現在に至るまでを気ままに書いているブログです。
私よりやや年上と思います。
1970年代の東京でエロを探しまわっている姿は共通しているようです。

2015年10月28日 風俗奇譚(1)の書き込みです。

奇譚クラブのバックナンバーを探そうと、神田神保町のアダルト専門の古書店に行った時だった。『風俗奇譚』という名前の雑誌を見つけた。
 奇譚という名前は『奇譚クラブ』や『SM奇譚』と通じるところがある。若しかしてと思って、一冊購入してみた(この店では古本はビニールで覆われているので中を確認して買うことは出来ない。
 中身は、予想とはやや違ったものの満足できるものだった。
 1960(昭和35)年1月に創刊された風俗奇譚は、奇譚クラブと違って、SMに特化していない。ホモや女装関係も扱っていた。奇譚クラブに対し、後発であることから特徴を出そうとしたのだろうか。その分、SM関係のページは少なくなるのだが、SM内のMの比率は、奇譚クラブに比べて高いので、M男の立場からは、奇譚クラブと遜色ない。


>神田神保町のアダルト専門の古書店
すずらん通りの中山書店でしょうかねぇ

続きはこちらです→2015年10月28日 風俗奇譚(1)




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こんな本が5月に刊行されていました。

秘匿の残酷絵巻[増補新装版]〜臼井静洋・四馬孝・観世一則 (TH ART SERIES)

風俗資料館が所蔵する作品の中でも、とりわけ貴重で特異な、3人の昭和の絵師の作品を収録。
痛ましき美学の極北!
「ここには人間が人間を責めいたぶる行為の残酷さがいっさいの美化もされず、剥き出しで描かれている。」
――室井亜砂二
《絵物語2編収録》
臼井静洋「ギブス娘製造医院」
四馬孝「包帯夫人」
★臼井静洋……昭和20〜30年代に活動していたと思われる謎の絵師。
★四馬孝……昭和30〜40年代ごろ「奇譚クラブ」などで活躍。
★観世一則……昭和50年代を中心にSM雑誌などで活躍。

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