女装という人生を生きる⑤

－－佳枝さんは、やはり、自分自身の男と女の間での振り子運動を楽しむタイプですか？
佳枝　そうですねぇ、女性の大変なところも分かりますから。


－－男と女のおいしいところだけを味わっていたいと？
アキ　ずるいんだ。
道子　女装者の常識からいけば、俺とか佳枝さんがノーマルなんだよ。　ただ、性転換手術までいく前に、ホルモン注射の段階があるからね。


－－皆さんは、どうですか？女性ホルモンは打っているんですか？
（全員、首を左右に振る）


－－驚きましたね。僕のイメージでは、女装する方は、風呂に入ったら、乳液でマッサージして、脱毛して、時にはホルモンもやっているというイメージがあったんですが。アキさんなんか、キレイな脚してらっしゃるんだけど、脱毛とかはしていないんですか？
アキ　してません。乳液、つけたりもしていないし、脱毛もしていない。脚がキレイなのは偶然ですよ。
道子　ホルモンやってるのは、百人に三人くらいでしょ。
サナエ　コミュニティによって、ちがいますよ。同じアマチュア女装者（彼女たちは、ゲイバーなどで女装で商売している人々をプロと呼び、自分たちをアマチュアという）のグループでも、やってる人が多いところもある。エリザベスに限って言えば、少ないですけど。
アキ　具体的に数えていったら、少数派ですよ。結婚してたらダメでしょ。家族で住んでても、会社の寮に入っていてもダメ。


－－つまり、人体を変形させて女になるのではなく、あくまでも服装倒錯に限定しているってことですね。
理佐子　本籍も現住所も男で、旅行先が女である、ということじゃないですか。
アキ　私の場合、今の会社辞めちゃっても、食べていけるメドがつけば、男、捨てちゃってもいい。 ただ、この年齢でホルモン、打ちつづけても、完全な体型は望めないって、医者に言われちゃったから。もうニ十代になるとダメ、十代から始めないと。

道子　男が女かはっきり性別が別れる前、つまり第二次性徴期の前に、ホルモンでもって女のほうへ持っていっちゃうわけ。それがニューハーフってやつなんだけど、遊びにいっているいる聞いても、ニューハーフはつまらないって言う人が多いね。
アキ　ニューハーフで楽しいのは、本人だけですよ。

－－では、シーメール。オッパィもペニスもついているという両性具有への憧れはないですか？
理佐子　どちらかといえばある。事情が許せば、ですけど。

－－理佐子さんの場合、事情が許せばというのが多いですね。想像の世界では行くとこまで行ってるけど、現実が許さないというギャップであえいでる感じだな。

佳枝　私はないですね。シーメール、相手にしたことあるけど、なんか異様でしたね。お店で、ペニスのある人とない人とどちらがいいかと言われて、ある人を呼んだんで
す。

別冊宝島「変態さんがいく」（宝島社刊）から引用
引用者注：座談会の出席者の名前は引用原本とは異なります。引用者の判断で仮名に置き換えております。