ネイルチップは情事の動かぬ証拠

女装子との情事が終わり、男はバスルームに入る。
ワイシャツの襟や下着に口紅がついていないを入念にチェックする。
丹念にシャワーを浴びて、香水の匂いを洗い流す。
ボディソープの香りにも気を付ける。
そして、スーツを着てネクタイを締めてホテルの部屋を出る。
「これなら絶対にバレない。大丈夫だ」
男は女装子たちから仕事人と呼ばれている。
仕事人であれば、家に不審なものを持ち込んではならないのだ。

しかし、一度ひやっとしたことがある。
帰宅は深夜。
忍び足で浴室に入り、再度シャワーを浴びようと裸になった。
すると、足の裏に何かがついている。
「ん？」と思い足の裏を見てみると、真っ赤なネイルチップだ。
彼女がつけていたもの。
それがベッドの上の熱戦ではがれて、床に落ちたのだろう。
それを知らず知らずのうちに踏んでしまったいた。

ネイルチップが浴室に落ちていたら、これは動かぬ証拠。
コロンボ警部であれば絶対に見逃さない。
家庭争議から離婚ということもありうる。
危機一髪、本当に危機一髪、危なかった。
その次から男は足の裏もチェックするようになった。