女装子愛好クラブ

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女装している、男の私が好き-。タケオの言葉は、とてもしっくりくると同時に、自分の性対象までも曖昧にさせる。

2020年08月09日 | ★女装の本・雑誌
『クロス』(山下紘加)を読みました。
主人公は28歳。警備会社に勤めている。
結婚しているが、付き合っている女性もいる。
ある日、付き合っている女性のパンティストッキングを借りて穿いてみた。
その感触が彼を女装に向かわせた。
下着女装からフル女装へ。
妻が出かけた後、自宅で女装する。
そして彼は、女装した男性が好きな男・タケオと出会う。
彼とデートを重ね抱かれるうちに自分の女性性に目覚めてくるのだ。


「女装している、きみが好きなんだ」
タケオと関係を持った後で、彼の性対象が男なのか女なのか、あるいはそのどちらもなのか、そんな当たり前の疑問が頭をもたげて、彼に質問したときのことだった。
すとんと腑に落ちる感覚と、納得がいかない気持ちが交錯し、質問したことを、私はすぐに後悔した。

女装している、男の私が好き-。タケオの言葉は、とてもしっくりくると同時に、自分の性対象までも曖昧にさせる。質問そのものが愚問だった。自分自身、投げかけられたら答えに詰まる質問を、自分がタケオに投げかけたのだから。

私はタケオと出会うまでは女性としか付き合ってはこなかったし、男性を性的な目で見たこともなく、女装を始めてからも、タケオ以外の男性とは寝ていない。しかし女装によって、男性とのセックスヘのハードルが低くなったのは確かだった。

私の心も、やや女性性に傾いたからだ。性は固定されたものではなく、はっきりと反転するものでもなく、常に揺らぎ続けるものだった。
私は自分の心が女性性に傾き始めている状態を、タケオと愛し合うようになってからようやく受けいれた。

自分のこととはいえ受けいれがたい事実を、その緩やかな傾斜を、大切にしたいと思えるようになったのだ。

ウィッグが外れているのに気づいたタケオが、私に彼るように言った。それから下着もつけて、服も着て-。

タケオに言われるがまま、昨夜彼の手で剥がされたものをひとつずつ身につけていく。どうせ脱がされるのに、と思う一方で、脱がすという工程も含めてタケオが自分とセックスをする醍醐味を感じているような気がして省けない。

タケオとのセックスで、私は長い時間をかけてコーティングした女の部分をほとんど一瞬で脱がされる。男らしい無骨な輪郭をカモフラージュしているウィッグは裸だけになれば乱れるし、いくらムダ毛処理をするようになったからといって、タケオの身体に生足を擦りつけるのにはまだ抵抗を感じる。

腕で必死になって隠そうとする胸は、シリコンなどで作られた本物さながらの人工乳房と少しでも大きく見せたいという気持ちからブラジャーと人工乳房の問に詰め込んだパッドの積み重ねによってできている。
タケオは少し強引に私の両腕をどけて、パッドをブラジャーごとぽとぽとと床に振り落とし、胸にぴたりと密着した人工乳房を荒々しく揉む。
いかにも作り物めいたピンクと肌色の中間色の乳首をしやぶり、舌で転がしたり、時折嬲るように歯先で噛んだりしながら、途中で顎を少し持ち上げ、上目遣いに私の表情を確認する。タケオがどんなに乳房を揉もうと乳首を弄ぼうと、私は直接その快楽を享受することはできない。多少の衝撃は受けても、たいした刺激にはつながらない。

自分の身体の上で行われていながらどこか他人事のようでもある。
しかし私は女として女のような声をあげる。それは演技であって演技ではない。なぜなら声をあげているうちに実際に気持ちが良くなり、エクスタシーにのまれるからだ。

「女装の自分とセックスしてみたいと思ったことはある?・」
まだタケオと出会ったばかりの頃、ベッドの中で彼は私にそんな質問を投げかけてきた。タケオの質問は、ときに核心をついてくる。
「あるよ」
正直に、私は答えた。事実、これまでにあったのだ。決して誰にも言わなかったけれど。
「でも自分とはできないから、俺とセックスするの?」
「……それは、違うな。女の自分は、自分の一部であって自分ではないから。分身とも違う。別物なんだけど、それでいて圧倒的に自分なんだ。だからなんていうか、変な話だけどとても気を遣うし、どう愛したらいいのかわからない。傷つけたくないの。」
私は私の中にいるかわいい女性を、傷つけたくない。……タケオはいつも私に優しい。

私は嬉しい。きみは愛されてる、幸せものなんだって、私は私の中の女性に話しかけてるよ。……」れを問いてタケオはどう思う?」
タケオは何も言わずに私の頭をウィッグの上から優しく撫でた。心地良い指の感触に酔いしれていると、不意に強くウィッグを引っ張ってくる。
 「何するの!・」
私は思わず大きな声をあげ、ウィッグを外されないよう必死に両手で固定する。タケオは可笑しそうに「きみの恥ずかしがっている姿が、僕をたまらなく興奮させるんだ」と白い歯を見せる。
「生まれ持ったものにあぐらをかいて験った生まれつきの女より、自分には無いものを後からつけ加えて努力している人間の方が、僕にはよっぽど魅力的に見えるんだ」

タケオはただ女の恰好をしているだけの女装者には惹かれないのだろうと悟る。
女として抱かれたいと思っている男の自分から、「女らしさ」を剥ぎ取ることに、常に快感を覚えているのだと。
剥ぎ取られた末に残る自分という人間を、果たしてタケオが愛しているのかは疑問だった。

               出所『クロス』(山下紘加著)
女装したシンデレラはハッピーエンドをむかえられるでしょうか.....。
女装した人魚姫は幸せを手に入れられるでしょうか.....。
続きは本を読んでみてください。



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