畑正憲さんのご冥福をお祈りいたします

昭和の高校時代から、畑正憲さんが好きでした。
『ムツゴロウの青春記』『ムツゴロウの結婚記』『ムツゴロウの放浪記』『ムツゴロウの博物志』など、人生前半の波乱な時期を書いた本を繰り返し繰り返し読んでいました。

畑正憲は満州に生まれ、少年時代に日本に帰り、日田市で純子さんと出会う。
東大理科二類に入るが、医者になれという父親に反発して、理学部動物学科に進む。
ここで研究生活に入り、動物に夢中になる。
大学院に進み、純子さんを呼び寄せて大塚で同棲。
しかし、生活は苦しく、そして院生としての研究も中途半端に終わってしまう。
そこで妻が妊娠。
行き詰ってしまった正憲は妻を日田市の実家に帰し、東北を彷徨う。
自殺未遂を起こしたがなんとか東京に戻り山谷のドヤ街に潜む。
そこで出会ったのが賭け麻雀。
日雇い労働者がなけなしの金をかける麻雀で生き延びる。
社会の底辺から抜けようとした正憲は動物学の専門性が活かせると考え、学習研究社の教育映画部に自分を売り込んだ。
そこで映像ディレクターとして優れた教育映画をいくつも撮り、賞も獲得する。
高校生時代から文学を志したこともあり、同時にエッセイを書き綴っていたが、それがエッセイスト賞作品となる。
こうして畑正憲は世に出たのであった。

畑正憲さんの人生からセレンディピティという言葉を思い起こします。
セレンディピティとは、ふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみ取ること。
動物が好き、生き物が好きを「核」にいろいろなことを一生懸命にそして楽しみながら行っていたら、いろいろな面白いことがやってきた。
そんな畑正憲さんが大好きでした。
ご冥福をお祈りいたします。









そして畑正憲さんは麻雀を愛し、強かった。



1979年、若きノンフィクションライターの沢木耕太郎はデビュー作『若き実力者たち』で、畑正憲を取材し「面白がる精神」と題したルポルタージュを書いています。