ゆうとたいへ

六十を過ぎて始めた自転車旅行、山登りをつづります

2020年7月22日 「M資金」という亡霊はまだ生きていた 私の体験

2020-07-22 | 昼間のエッセー
200722_「M資金」という亡霊はまだ生きていた

2020年7月22日 「M資金」という亡霊はまだ生きていた

 7月20日 産経新聞  p.3
「FACTA 8月号 コロワイド会長『M資金禍』30億円詐欺被害」

 7月21日 産経新聞 p.23
 「先の大戦に敗れた日本を統治したGHQ (連合国軍総司令部)が接収したとされる巨額資産『M資金』を提供すると偽って、会社役員の70代の男性から現金計約3億円を詐取したとして、東京都港区海岸の無職、武藤容疑者ら男3人を逮捕した。
この男たちは、別途28億円をだました疑いもある」

「M資金」の「M」とは、マッカーサーの「M」。
この話は、マッカーサーが当時の日本政府から接収したとされるお金を、どこかに隠したという話から出発する。

これと似た話は、豊臣家の財宝とか武田信玄の財宝とか、山ほどある。

ちなみにこの男たちの住んでいた「港区海岸」とは、ほとんどスラム街といった方がよいくらいの場所だ。
下の写真は「港区海岸」の隣の「港区芝浦」の写真。
<港区芝浦にある民家>


大のおとな、それもそれなりの会社の会長まで上り詰めた人が、プロにかかるとコロッとだまされてしまう。
この男たちは「役者」を何人も揃え、さながら小説の登場人物のように話をさせ、相手をだます。

私にも似たような経験がある。
(登場人物、場所の名前は変えてあります)

・・・・

40年前、私は、自分の働いている会社が、零細な取引先から売掛金・手形の担保として得た不動産(抵当権)の管理をしていた。

<40年前のある日>

予約なしに、紳士帽をかぶり古びた背広を着た50歳ぐらいの男が、部屋にぶらっと入ってきた。
男は名詞を出しながら、「わたしは、こういうものですが、ここに不動産の担保を管理されている方はおりますか?」という。

私がその男の対応をした。

<男の話>
「あなたの会社は、秩父山の山の上の土地に担保をつけていますね。
今日は、その件で来たんです」

「実は、この山は、『秩父開拓農協』という組合が牛を飼っている土地なんです。
今、その組合は牛舎を作るために銀行から金を借りようとしているんです」

「組合が、銀行に相談したら、『この土地にはすでに担保がついているから、この担保を消さないと金は貸せませんよ』といわれたらしいんです。組合の人間ときたらなんにもしらないんですから、ワッツハッハ」

「まったく、この開拓農場をやっているヤツらは終戦後、南方から引き揚げてここに住み着いたヤツらで、法律のことなんか何にもしらないんですよ。ワッツハッハ」

「開拓農協の中に私のことを知っているヤツがいたもんで、私に、この担保をつけた会社に行って、担保をはずすよう、お願いしてみてくれと頼まれたんでよ。ほんとに組合はバカばっかりでどうしようもないんですよ。ワッツハハ」

「こんど、組合長を連れてきますからよろしくお願いしますよ。ワッツハッハ」

<一ヶ月後>

男がいう。
「ごぶさたしました。組合長を連れてきました」
組合長は70代ぐらいの老人。

「この男(組合長)はね、戦争から帰ってきてからは、山の上で、一人で牛の世話ばっかりやってたもんで、人間のことばがまともにしゃべれなくなってしまったんですよ。ワッツハッハ」

「下のエレベータホールからエレベータに乗るときも、行く階が40階だと聞くと、途中でしょんべんがしたくなったら、どうすればいいんだ、なんて聞くんですよ。ワッツハハ」

男が組合長に向かって「おめえもなにかしゃべってみろ」という。

組合長「アーオー、オアー、ウエー」

男「ね、この通り、牛としか話したことがないもんで、人とは話せなくなってしまったんですよ。でも私が組合長のことばを通訳しますから大丈夫ですよ。ワッツハッハ」

組合長「アーオー、オアー、ウエー、エオー、アイー」

男「いま組合長がいったのは、金は払うから、おたくが秩父山につけている担保をはずしてもらえませんか、と言っているんです」

組合長「ウエー、エオー、アイー、アーオー、オアー」

男「組合長は、そうすると銀行から金を借りて牛舎を作れるんです、といっているんです」

男「また来ますから、よく考えておいてください」


<男の帰った後、社内で>

吉田課長と私

私「吉田課長、いまどき、電車に乗るんならわかりますが、エレベータに乗るとき小便をもよおしたらどうすればいいかなんて心配するひと、いますか? 
牛とばっかり一緒にいたから、日本語忘れた? あの仲介している男は、なんか怪しいですね」

吉田課長「まあ、いずれにせよ、こちらも金をもらえば、担保を放棄してもいいわけだから、金額が提示されるのを待ってみよう」


<それから一ヶ月後>

 男が来社した。

男「イヤーご無沙汰しています。まったくあの組合長ときたら何を話しているのかさっぱり分からねえんです。今回は、おめえの話すことはさっぱり分からねえから、来るな、と言ってきたんです。ワッハッハ」

「組合長にはね、こちらさんは大会社さんだから、タダで担保を消してもらおうなんて思ってはダメだよ、それなりの金をはらわねばなんね、と言ってあります」

「私は、この土地のことを調べてきました。
調べた結果、この土地にはお宅の抵当権のほか、『入会権』(山で薪を取る権利)というものがついているんです。この『入会権』というものは不動産の登記簿には書いありません。役場のそういう部署に行かないと教えてくれないのです」

「今回の土地の件では、お宅の他に、この入会権を付けている何人かのの人にも金を払わなければならないんで、残念ながら、お宅にお渡しできるのはこのぐらいの金額となります」

といって、金額を提示してきた。

<男が帰った後>

私「吉田課長。今どき、明治時代にあったような『入会権』なんてほんとにあるんですかね? あの男の提示してきた金額で担保を消しますか?」

吉田課長「あの土地の担保は、担保を提供していた会社はもう倒産してないし、当社も別の担保で全額を回収してあるから、いくらでもいいんだよ。
まあ、『入会権』なんかが、ほんとにあるのかどうかなんて調べて、時間を取られるのは時間の無駄だ。少額でも金を払うといっているのだから、それをもらって、この件は終わりにしよう」

<それから一年後>

私は、この土地がその後どうなったのか、気になったのでこの土地の不動産登記簿を取ってみた。

登記簿を見ると、そこにはなんと、
当社が担保を消したあと、名前なんか聞いたこともないような会社が3社ほど、この土地を担保にして、銀行から巨額の金を借りているではないか。

・・・・

以上が、「アウ、オエ、ウエ」としか話せないという組合長を連れてきた男の話でした。

・・・・

下記に続報が載っている。

2020年8月20日 産経新聞

一、「M資金」の「M」とは、GHQの経済科学局長だったマーカット少将からとったものらしい。

二、だまされた男は、丸の内の高層ビルで、男二人と会った。

詐欺グループ
「このビルは、まるまる、うちの会社のものなんです」
「我々は、英国にあるM資金の管理団体と交渉できるんです」
「M資金は2800億円あるんですよ」
「ただし、提供できる方は、こちらで選ばせてもらいます。お金持ちであることが条件です。少なくとも2800億円の1パーセント、つまり28億円ぐらいの金をすぐ動かせるぐらいの金持ちじゃないとだめですね」

三、だまさえた男は、28億円を詐欺グループの口座に振り込んだ。

以上

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