アメリカの医学誌に掲載された論文によると、1週間に3個以上の卵を食べると健康を害するのだという。つい先日、健康問題を取り上げた得たテレビのクイズ番組で、従来は、1日1個以上の卵の摂取は健康に害があると言われていたが、原因となるコレステロールは、肝臓によって調整されるので、1日1個に拘る必要はないというのが正解だった。
結果の異なる二つの考えの根拠は、いずれも科学的、医学的な研究結果である。一体、1週間に、3個以上の卵は食べてもいいのか悪いのか。
科学的根拠とは何か?
そう言えば、かつて、コーヒーを飲むとガンになるなどということが報じられた。それも医学的見地からの発言であった。しかし、今や、コーヒーは、ガン発生の抑止効果があると言われている。「いや、取り過ぎは悪い。」などという言い逃れもあろうが、取り過ぎは、水だってよくない。
科学、医学に対する信頼の失墜は、スタップ細胞で証明されたかに見えるが、今日でも絶大な力を発揮している。健康食品のCMには、医学博士なる者が出てきて効果を保証していることが多い.時に誇大広告としてお叱りを受けているが、素人には、科学的、医学的根拠というのは一定の説得力を持ち続けている。錬金術の時代と大して変わりがないのかもしれない。
ついでに言っておくと、TVのCMにおける食品や薬品の効能について、堂々と、声高に「……効く」「効果あり」と言いつつ、小さな文字(スーパー)で、「これは個人の感想・意見であり、効能を意味するものではありません。」などというぶち壊しで矛盾する情報を同居させていることと同根の現象のようでもある。ある意見や結論が「多義的」である、一つに決められないという事実を背景に持っている。CMは、狡猾な方法で、そのいかがわしさをクリアしているし、視聴者は、そのいかがわしさを、大人の態度で許容しているのである。
世の中の諸事象、諸問題は、究極的には、自己責任で判断するしかないのだが、その方法が見当たらない。何を信じていいのか分からないということになる。が、何を信じていいのか分からないという不安こそが、情報の受け手としての私たちを鍛える契機になっているとも考えられる。これからは、せめて、新聞に書いてあっただの、テレビで言っていたなどということを判断の根拠にしないで生きていこう。