先日、友人夫妻の車で、ちょっと遠出して、みかんの島に行くことがあった。この時期、温州ミカン系は、もうすっかり時期遅れで、とても食用に向かない。代わって、はるか、せとか、不知火など、昔はほとんど目を向けなかった種類の柑橘類が最盛期で、食べてみると、新鮮で、甘くて、とてもおいしい。たくさん買い込んで帰った。 帰りに、「グリーンピア」という、年金の基金を乱用して創った保養施設に寄ってみることにした。全国13カ所に建設されたという、無駄な施設は、平成17年までに全て廃止されることになったが、当該施設は、K市に譲渡されて、現在は公的施設として運用されている。 JR駅からは、遙かに離れた位置にあり、車なしには利用できない。当日は、土曜日であるのに、利用者はまばらで、とても活用されているようには見えなかった。フロント(情報センター?)に二名の女性がいたが、これは、市の職員か、派遣社員かであろう。ちょっと声を掛けてやりとりわをした同行の女性二人は、「態度が悪い」と怒りながら帰ってきた。公営施設の常であろうか。中国の国営航空会社や売店の従業員に対する不評を思い出した。 宿泊施設に隣接する大きな建物がなんだろうと、ちょっとのぞいてみたが、よく分からない。中に入って、ロビーにいる男性に、「これは何の施設ですか?」と訊ねると、「何といって……。」と要領を得ない。なにやら部屋で集会をしている。重ねて、「これは何をしているのですか?」と訊くと、「塾の研修会。」とのこと。(そういうのを「研修施設」というのだ!)男は、どうやら、塾経営の研修会の主宰者側の人間だったようだ。問題教員の代表的存在の一つが、児童、生徒とのコミュニケーションができない人間、質問に答えない、答えられない人間だという。こういう責任者を抱える学習塾とはいかなる所かと不思議な気がした。 帰りは、古い桟橋で、釣りをしている男性に話しかけた。「釣れますか?」「何が釣れるのですか?」という簡単な問いに、ちゃんとした答えができない。コミュニケーション活動の基本ができないのである。考えてみれば、こういう、言葉によるコミュニケーションの教育を、学校ではきちんとしていないのかもしれない。何しろ「知らない人と話をしてはいけません。」というような教育をする時代である。 入門期の英語教科書の、Are you a boy? Yes, I am (a boy).などの練習を、非実用的で、無駄なものと笑っていてはならないのだと分かった。団地内の、小、中、高校、大学生は、いずれも明るく挨拶をしてくれる。円滑なコミュニケーションができて、心がほっこりする。高邁、難解な知識や技能の教育も必要であろうが、一人の人間として、あるいは他者と共存すべき人間としての基礎的・基本的態度やスキルにも力を注ぐべきだと考えた一日だった。
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