山の上のロックの永~い旅(2)

2020-08-10 09:22:07 | 童話
目が回ったのが直ったので、僕は何にぶつかって止ったのか確かめた。松だ、やっと大きな松の木の根元に居るのが分かった。
『僕はロックという名前です。松の木のおじさん、大丈夫ですか?』
『ああっ、大丈夫だよ。お前のスビードが遅くなっていたので、わしでも止められたよ。もっと速いとダメだったけれどね。』
『ありがとう、助かった。目がグルグル回って大変だった。』
『わしは三百年ここに居るけれど、お前のように転がって来る石を何度か見たよ。』
『そうなの、みんな転がるのが上手だった?』
『ああっ、みんな上手いもんだ。ところで、お前はどこへ行くのだい?』

『僕はね、これから海へ行くんだ。』
『海は遠いよ。』
『海は遠いと聞いていたけれど、そんなに遠いの?』
『ああっ、遠いよ。何年かかるかなぁ。いやいや、何百年かなぁ。』
『そうか、頑張らないといけないなぁ。』
『松の木のおじさん、少しここで休憩させてね。』
『ああっいいよ、好きなだけ居なさい。』

『あっ、何か居る。やぁ、さっきのウサギさんだ。僕の名前はロック、さっきは驚かせてゴメンね。』
ウサギは
『お腹の上に乗っていい?』
『ああっ、いいよ。僕は暫くここに居るからお話しをしようよ。』
『転がって来たばかりだからお腹にも苔がまだ付いていないね。』
『うん、転がっている時に苔が全部取れてしまったんだ。』
『そんなに転がって来たの?』
『うん、あの高い山の頂上から転がって来たんだ。』
『目が回ったでしょ。』
『うん、ぐるんぐるん回って、上か下か、右か左か分かんなかった。』
『大丈夫?』
『もう直ったから大丈夫だよ。』

『ウサギさんは近くに住んでるの?』
『ここから少し上に行った所の穴に住んでいるの。』
『僕が転がって、君の住んでる穴は大丈夫だった?』
『ええ、大丈夫だったわ。これから何処へ行くの?』
『海へ行くんだよ。』
『海って遠いの?』
『僕も知らないけれど、お父さんが遠いって言っていたよ。』
『私も行ってみたいけれど、そんなに遠いのなら一緒に行けないわね。』
『そうだね。僕だけで行ってくるよ。』

僕は松の木のおじさんの根元で暫く過ごした。その間、ウサギがキツネやムササビ達の友達を沢山連れて来て、毎日楽しく過ごしていた。