僕は自転車(4)

2021-09-20 09:58:47 | 童話
そして僕は、綺麗に磨かれて、油もさしてもらって元気にしている。新しい自転車で帰って来た男の子は必ず僕の所に来て、サドルをボンポンとたたいてくれる。何も言わないが僕は嬉しい。

少し経って、僕の仲間ができた。男の子が大人になって、自分のお金でカッコいいマウンテンバイクを買ったのだ。
そして、今迄乗っていた大きな自転車も綺麗にして、僕の隣りに置いてある。3台の自転車で時々お話しをするので僕は寂しくない。

ある日、僕は他の家に貰われて行くことになった。小さな子供が居る家で、自転車の練習をしたいというのだ。
僕は昔を思い出した。転びながら練習をしたよね。僕は今度の小さな子供も上手く乗れるようにしてあげようと思った。

僕が貰われて行く日に、男の子がやって来て、サドルをボンポンと叩いた。僕は涙をこらえるのが大変だった。僕は幸せだったし、今も幸せだ。