第十四章 セミの終わる頃
そして、今年の夏も終わろうとしている時に、一匹のセミが遅れてきたようにけたたましく鳴き始めたのを聞き、リミカは今年の夏はどのように終わるのだろうかと考え、活と凛とで暮らしている治子もまた、今年の夏はどのように終わるのだろうかと考えているのが目に見えるようである。
毎年もセミの終わる頃に、リミカは治子や凛との思い出や、治子から聞いていた活の治子への強烈な慕情と勇ましい行動によって、治子がこの地で生きていた時の幸せが思い起こされてくる。
また、治子の後を追っている自分も天との暮らしが、治子を鏡に映したように容易に推察され、今年のセミの終わる頃も去年と同じで、リミカの膝の上に頭を乗せて愛情を表現している天と心で会話を交わしている。
「お前はかわいいねえ。だけれど、お前に子供ができても、その子供が愛情を捧げる女性はまだ現れないね。」
そして、夏が終わろうとしているが、この地は相変わらず夏の暑い日に木々の間を渡って来る風が心地良く、温泉宿の人情味溢れる土地柄と、おかみさん達の飾らないもてなしとで、湯治に来た年配者は、帰って来たという親しみから、リピーターが多いのは今も変わらない。
また、夏になると多くのセミが種の存続のために力強く雌を求めて叫び始めるが、一方で猟師による鹿の間引きはこの夏も行われるという。
何頭かの母鹿も猟師の手にかかり、一人ぼっちとなる小鹿がでると思われるが、猟師の
「最近は鹿が増えて畑の野菜や森の木の芽が被害を受けているので、頭数を減すようにしているんだよ。」
と言う言葉が耳に残る。
リミカは、誰か私の後を追いかけて傷ついた小鹿を助けることにより、その小鹿から自分の死への願望から生きることの使命を教えられ、この地でたくましく生きる女性が現れるのではないかとの予感がして、リミカは自分を追いかけている誰かを確かめるために、セミが終わる頃になると毎年自分の後ろを振り返って見ている。
完
そして、今年の夏も終わろうとしている時に、一匹のセミが遅れてきたようにけたたましく鳴き始めたのを聞き、リミカは今年の夏はどのように終わるのだろうかと考え、活と凛とで暮らしている治子もまた、今年の夏はどのように終わるのだろうかと考えているのが目に見えるようである。
毎年もセミの終わる頃に、リミカは治子や凛との思い出や、治子から聞いていた活の治子への強烈な慕情と勇ましい行動によって、治子がこの地で生きていた時の幸せが思い起こされてくる。
また、治子の後を追っている自分も天との暮らしが、治子を鏡に映したように容易に推察され、今年のセミの終わる頃も去年と同じで、リミカの膝の上に頭を乗せて愛情を表現している天と心で会話を交わしている。
「お前はかわいいねえ。だけれど、お前に子供ができても、その子供が愛情を捧げる女性はまだ現れないね。」
そして、夏が終わろうとしているが、この地は相変わらず夏の暑い日に木々の間を渡って来る風が心地良く、温泉宿の人情味溢れる土地柄と、おかみさん達の飾らないもてなしとで、湯治に来た年配者は、帰って来たという親しみから、リピーターが多いのは今も変わらない。
また、夏になると多くのセミが種の存続のために力強く雌を求めて叫び始めるが、一方で猟師による鹿の間引きはこの夏も行われるという。
何頭かの母鹿も猟師の手にかかり、一人ぼっちとなる小鹿がでると思われるが、猟師の
「最近は鹿が増えて畑の野菜や森の木の芽が被害を受けているので、頭数を減すようにしているんだよ。」
と言う言葉が耳に残る。
リミカは、誰か私の後を追いかけて傷ついた小鹿を助けることにより、その小鹿から自分の死への願望から生きることの使命を教えられ、この地でたくましく生きる女性が現れるのではないかとの予感がして、リミカは自分を追いかけている誰かを確かめるために、セミが終わる頃になると毎年自分の後ろを振り返って見ている。
完
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