ぽろろ、ぽろろ。(3)

2016-08-30 21:29:21 | 童話
山の方から
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。
『だぁれ?』
大きな杉の木が呼んでいるのだ。
『大きな木だから僕は登れないよ。なぁに、太い枝にかけたブランコに乗せてくれるの。ぶーらん、ぶーらん。楽しいね。』

僕の机を置いてある部屋から
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。
『だぁれ?』
時計が呼んでいるのだ。
『なぁに、電池が無くなりかけているの、よし、取り換えてあげるね。だから、3時になったらおやつを食べるから教えてね。』

駅の方から
『ぱろろ、ぼろろ。ぱろろ、ぼろろ。』
と声が聞こえてくる。
『だぁれ?』
電車が僕を呼んでいる。
『電車に乗って遠くへ行こうよだって、だめだよ、今日はね、お父さんの自動車で買い物に行くんだ。何を買いに行くのだって、お花を植え替えるので、植木鉢を買いに行くんだよ。大きな植木鉢を買うから電車に乗せられないんだ。また今度、デパートへ行く時に電車君に乗せてもらうね。』

庭の方から
『ぱろろ、ぼろろ。ぱろろ、ぼろろ。』
と声が聞こえてくる。
『だぁれ?』
誰が僕を呼んでいるのか判らない。
『だぁれ? あっ、お花に小さなテントウ虫が止まっている。今度はこっちから『ぱろろ、ぼろろ。ぱろろ、ぼろろ。』と聞こえる。また今度はあっちから聞こえてくる。テントウ虫君が3匹、僕の方に集まって来た。何をするの? そうか、3匹で背中の模様のファッションショーをやるんだ。うーん困ったなぁ、3匹は模様が違うけれど、全部きれいだからね。そうだ、3匹全部が一番だ。』

たくさんの友達ができて楽しいな、もっとたくさんの友達を作ろうよ。『ぱろろ、ぼろろ。ぱろろ、ぼろろ。』。小さな声で『ぱろろ、ぼろろ。ぱろろ、ぼろろ。』。もっと小さな声で『ぱろろ、ぼろろ。ぱろろ、ぼろろ。』。大きな声で『ぱろろ、ぼろろ。ぱろろ、ぼろろ。』。

             おしまい


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