虹の階段(1)

2020-02-24 09:31:55 | 童話
2学期の終りの日、僕は通信簿をもらって学校を出て、友達と一緒に家に帰っていた。
空には入道雲がいっぱい出ていて、その中の一番大きな入道雲が、もくもくと大きくなり空が暗くなった。
ピカッと稲妻が光り、ゴロゴロと雷の音がして、大粒の雨が降ってきだした。
『すみません、少し雨宿りをさせて下さい。』
『ああ、いいよ。』
僕と友達は近くの文房具屋さんで雨宿りをさせてもらった。

雨宿りをさせてもらっている間に、僕達はいろいろな文房具を見せてもらった。
コンパスはバレリーナが片足で立ってクルクルと回っているみたいだなぁ。
それと、分度器はまんじゅうを半分に切ったみたいでおいしそうだし、四角いエンピツは体育で使う平均台みたいだ。エンピツの平均台はハツカネズミなら渡れるかな?
消しゴムは、少し硬くて、少し柔らかくて、体育館に有るマットみたいだ。
ノートブックはお布団みたいで、間に入ったら寝られるかな?

こうして文房具を見せてもらっていたら雨がやんだ。僕
達は文房具屋さんに
『ありがとうございました。』
とお礼を言って外に出て空を見上げると大きくきれいな虹がでていた。
虹は僕達の家の方角なので虹に向って歩いて行くと虹のところに出た。
僕の服と友達の服がキラキラと光っているのに気が付いて、友達に教えてあげると友達も気が付いていた。

そして、友達は虹の中に入った。中は全てがキラキラと光っていて、赤色、橙色、黄色、緑色、青色、藍色、紫色の7つの階段が有った。
『この階段を上がって行くと、どこへ行くのかなぁ?』
『そうだねぇ、どこへ行くのかなぁ?』
『僕は橙色の階段を上がってみるよ。』
『じゃ、僕は緑色の階段を上がってみるね。』

僕達はキラキラと光っている中を上がって行き、途中で違う色の階段を上がって行った。
階段を上がって行くと、クルクルと回っているバレリーナと会った。
そして、テーブルの上には半分に切ったおまんじゅうが置いて有った。

僕は自転車(5)

2020-02-23 07:32:11 | 童話
僕が他の家に貰われて行く日、今度の家のおじさんが自動車でやって来た。
おじさんが僕を自動車に積む時に、僕を大事にしてくれた男の子が、サドルをボンポンと叩いて
『今迄ありがとう。』
と言った。僕はみんなに見つからないようにして涙を流した。
『バイバイ。』
男の子と男の子のお父さんに見送られて、走り出した自動車の中から手を振った。いや、手ではなくハンドルを振った。

ほどなく、自動車は今度僕に乗ってくれる子供の家に着いた。
『わ~い自転車だ、ピカピカの自転車だ。』
『大事に乗るんだよ。』
と言っておじさんが僕を自動車から降ろした。
『うん、大事にするよ。』
『明日の日曜日に、公園で乗る練習をさせてやるよ。』
『うん。』と言って僕をずっと眺めていた。

次の日から、自転車の練習が始まった。
『ほらほらっ、下を見ないで前を見て。』
僕は、練習する時に大人はみんな同じ事を言うのだなぁと思った。

『お父さん、手を離さないでね、離したらダメだよ。』
前の男の子の時と同じようにグラグラ、グラグラとしている。
僕は必死になってこらえて転ばないようにしていた。しかし、おじさんが手を離した時に僕は転んでしまい、この子も膝を擦りむいてしまった。
『うわ~ん、痛いよ~。』
おじさんは
『少し怪我するくらいでないと自転車に乗れないよ。』
また僕は前の男の子のお父さんと同じ事を言っていると思った。
毎週、練習をして、グラグラするが、やっと転ばないようになった。

この子も僕を大事にしてくれる。転んだ時は家に帰ってから、僕を綺麗に洗ってくれる。
この子も大きくなって、大きな自転車を買っても、僕を大事にしてくれると思う。

そして、外から帰って来た時に、何も言わないでサドルをボンポンと叩いてくれると嬉しいなぁ。そう思いながら、この子と練習を続けている。

  おしまい

僕は自転車(4)

2020-02-22 09:16:09 | 童話
そして僕は、綺麗に磨かれて、油もさしてもらって元気にしている。
新しい自転車で帰って来た男の子は必ず僕の所に来て、サドルをボンポンとたたいてくれる。何も言わないが僕は嬉しい。

少し経って、僕の仲間ができた。
男の子が大人になって、自分のお金でカッコいいマウンテンバイクを買ったのだ。
そして、今迄乗っていた大きな自転車も綺麗にして、僕の隣り置いてある。
2台の自動車で時々お話しをするので僕は寂しくない。

ある日、僕は他の家に貰われて行くことになった。小さな子供が居る家で、自転車の練習をしたいというのだ。
僕は昔を思い出した。
転びながら練習をしたよね。

僕は今度の小さな子供も上手く乗れるようにしてあげようと思った。

僕が貰われて行く日に、男の子がやって来て、サドルをボンポンと叩いた。
僕は涙をこらえるのが大変だった。
僕は幸せだったし、今も幸せだ。

僕は自転車(3)

2020-02-21 06:52:05 | 童話
男の子は、夕飯の時にお母さんに
『あのね、僕、自転車に乗れるようになったよ。』
『あらそう、頑張ったのね。良かったわね。』
と喜んでくれた。
そして、しばらくお父さんや友達と一緒に僕に乗って楽しんだ。

ある日、お父さんが男の子に
『大きくなったので新しい自転車を買ってやろうか?』
と言った。
男の子は嬉しく
『うん。』
と言ったけれど、男の子は
『要らない、僕が自転車に乗れるようになったのは、この自転車だったからなんだ。僕はこの自転車が大好きなんだ。僕がこの自転車を乗らなくなると自転車がかわいそうだから。』
と言ったので、僕は
『ありがとう、だけど僕は違う子供に乗ってもらうから大丈夫だよ。』
と涙を抑えて言った。

お父さんが
『それでは、新しい自転車を買ってやるが、この自転車も家に置いておくから、時々この自転車にも乗ってやればいい。』
と言ったので、男の子は
『うん、そうする。』
と応えた。
僕は嬉しくなり、
『ありがとう、ありがとう。』
と何度も言った。

僕は自転車(2)

2020-02-20 06:33:52 | 童話
そこへ、男の子の友達が自転車でやって来た。
『なんだ、まだ乗れないのかよ。』
と言った。
自転車の僕は男の子が乗れるように頑張ることにした。
グラグラしていても、僕が倒れないようにすればいいのだ。
僕は男の子に
『一緒に頑張ろうよ、僕も倒れないようにするから。』
といって励ました。
『うん、頑張る。』
と言って、友達の前で僕を漕ぎ始めた。

僕はグラグラしながらも倒れないように男の子を支えた。
友達は
『なんだ、乗れるじゃないか。』
男の子は嬉しそうに
『うん、そうだね。』
と言って公園の中をぐるぐると、いつまでも僕に乗って走っていた。

だんだん上手くなり、僕はグラグラしなくなった。
お父さんさんが
『おぅ、乗れるようになったじゃないか。』
と言い、男の子以上に嬉しそうにしていた。