僕は自転車(1)

2020-02-19 06:36:17 | 童話
僕は自転車、この家の男の子の自転車。
男の子のお父さんの自転車は古いが、僕は新しい。
もう一つ、お父さんのとは違うところが有る。僕には補助輪が付いている。男の子は頑張っているが、なかなか補助輪が外せない。

今日も補助輪を外して、お父さんと公園で練習をしている。
『お父さん、手を離さないでね。』
男の子が乗った僕がグラグラ、グラグラ。なかなか上手くならない。
お父さんが
『下ばかり見ているからだ、もっと遠くを見ないとダメだよ。』
だけれど男の子は遠くを見ることができない。
『ほらほらっ、前を見て、遠くを見て。』
お父さんの声は聞こえるが、顔が自然に前の車輪の地面を見てしまう。

急に僕がグラグラして転んでしまった。お父さんが手を離したのだ。
男の子は血のにじんだ膝を見ながら泣くのを我慢している。
『少し乗れるようになってきたから、もう少しだよ。』
お父さんが励ましているが、男の子は膝が痛くて仕方がない。
『男だろっ、頑張れ。』
男の子は『僕は男でなくてもいい。』と思った。

カピバラさんの2泊3日(9)

2020-02-18 06:54:27 | 童話
『おはよう。』
僕は今日も起こされた。歯を磨いて、顔を洗って、ブルブルッ。
『ああ、気持ちいい。今日はもう帰るんだね。』
4匹と3匹の全員で朝ご飯を食べました。

今朝採ってきたみずみずしいキュウリとニンジンとトウモロコシを貰ったので、水を満たした水筒と一緒にリュックに詰込みました。さあ出発だ。
『また来なさいね。』
『うん、きっと来るからね。』
お父さんとお母さんが
『お世話になりました。』
と言って手を振りました。
僕は、もっと大きく手を降って
『バイバ~イ。』
と言って歩き始めました。
僕達はまた、お父さんを先頭に一列になって歩きました。
暫く歩いていると雨がポツポツと降ってきました。
『お父さん、どうします?』
『もう少し歩いて、雨が強くなったら、どこかで雨宿りをしよう。』
『そうね、みんな頑張ってね。』
そして、雨が段々強くなってきました。
『あそこのお菓子屋さんの軒先で、雨宿りをさせてもらおう。』
『随分濡れたねえ。』
ピカピカ、ゴロゴロ、。
『うわっ、雷だ。』
『雷が落ちると死んじゃうのかなぁ。』

みんなで半分濡れながら雨宿りをしていると、今来た方から自動車が来て止った。
『随分濡れたね。』
昨日泊まっていた家のおじさんが運転して来たのでした。
助手席のおばさんが僕達4匹の体をタオルで拭いて、後の座席に乗せてくれました。
『君達の家まで送ってあげるよ。』
そう言っておじさんは車を走らせていきました。

そして、高速道路を走ったので、たちまち家に着いた。
僕達の飼い主さんが
『遠い所をありがとうございました。』
『いやいや、高速道路を走れば直ぐですから。』
『そうですね、カピバラは高速道路を歩けないからね。』
『それでは、私達はこれで帰りますから。』
『ありがとう。バイバ~イ。』
僕は走って行く車に、いつ迄も手を振りました。

僕達の飼い主さんが
『夕食を食べたらお風呂に入って、早く寝なさい。』
僕はお姉ちゃんと
『楽しかったねぇ。』
『また田舎に行きたいね。』
そして、僕達4匹は牛乳を飲みながら
『お風呂上がりの牛乳は、いつ飲んでも美味しいね。』
僕達は歯を磨いてから、柔らかい藁を敷き詰めた箱の中で早く寝ました。
グウグウグウ。
            おしまい

カピバラさんの2泊3日(8)

2020-02-17 06:38:10 | 童話
僕達が家に着くと、飼い主さんのおばさんが、
『楽しかった?良かったね。さあご飯よ。』
と、昨日の夕食と同じ美味しい草と野菜を用意してくれていました。
また僕達は、モシャモシャモシャ、コリコリコリと食べてお腹がいっぱいになりました。
『ねぇ、お風呂から出て牛乳を飲んだら花火をしようか?』
『うん、花火をしたい。』
『じぁ、早くお風呂に入ろう。』

そして、みんなでお風呂に入ってから、牛乳を飲みました。
『今日の牛乳も美味しいねぇ。』
『そうだねぇ。』
『外が暗くなったので花火をやるよ。』
『どんな花火があるの?』
『線香花火と手にもってシュゥシュゥというのがあるよ。』
『私は線香花火がいい。』
『僕はシュゥシュゥというのがいいなぁ。』
『僕もシュゥシュゥというのにする。』
『綺麗だね。』
『そうね。』
『もう終ってしまった。』

お母さんが『もう寝るのだから歯を磨いてきなさい。』
『はぁ~い。』
『明日はもう帰るのだね。』
『そうね、楽しい事はすぐ終るわね。』
そして、僕達は明日の用意をしてから、藁を敷いた箱の中で、グ~、グ~、グ~。

カピバラさんの2泊3日(7)

2020-02-16 08:17:05 | 童話
『食事が終わったら水浴びに行こうか?』
『水浴びができる所が有るの?』
『うん、近くに川が有るんだよ。』
『行きたい、行きたい。』
『それでは、宿題を早く終わらせなさい。』
『はぁ~い。』
僕と男の子で一緒に宿題をやりました。
宿題が終ったので、僕達4匹と、この家の3匹の全員で水浴びに行く事にしました。

水浴びのできる川はすぐ近くにありました。
『うわっ、冷たい。』
『綺麗な水ね。』
『水の中に入ろうよ。』みんな大騒ぎをしました。
『あっ、痛い。』僕は大きさ石の上から落ちてお尻をぶつけてしまいました。
『石の上には苔が生えているので、滑るから気を付けなさい。』
『はぁ~い。』僕はぶつけたお尻を擦りながら返事をしました。
『あっ、お魚がいる。』
『イワナだよ。綺麗な水の中にしかいないんだ。』
『僕は金魚と熱帯魚しか見た事が無いよ。』
『イワナが何か言っているよ。』
『知らないカピバラだけど友達かい?と言っているんだよ。』
『そう、友達だよ。と言って。』
『イワナ以外は、どんな魚が居るの?』
『アユもいるよ。それから、魚ではないけれど、山椒魚も居るんだ。』
『凄いね、いっぱい居るんだね。』
『うん、水が綺麗だからね。』

『みんな帰るよ。』お父さんが高い岩の上から僕達を呼びました。
『よく体を拭きなさい。』とお母さんがみんなにタオルを渡してくれたので、みんなで体を拭きっこしてから帰る用意をしました。そして、みんなで並んで帰りました。
『楽しかったね。』
『そうだね。』
『帰ったら夕ご飯だね。』
『いっぱい遊んだからお腹が減ったね。』
『そうだね、沢山食べようね。』
『うん、そうだね。』

カピバラさんの2泊3日(6)

2020-02-15 07:48:11 | 童話
『これでみんなで遅くまでお話しができるね。』
とお姉ちゃんが言いましたが、お父さんが
『今日は疲れたから早く寝るよ。』
と言って、夕食の後、お風呂に入りました。お風呂はいつ入っても気持ち良く、ウトウトとしてしまう。
僕達家族全員で風呂上りの牛乳を飲んだ。
『美味しいねぇ、お姉ちゃん。』
『うん、美味しいね。』お父さんも
『風呂上りの牛乳は、本当に美味しいね。』
お母さんも
『そうね、幸せね。』
と言って目を細めていました。

この家のカピバラは両親と男の子の3匹で、子供は僕と同い年です。
僕はその子と遊びたかったのですが、お父さんの言う通り早く寝ました。
『おはよう。』
と男の子のカピバラが言った。
僕達のお父さんとお母さんとお姉ちゃんも起きていました。
『あれっ、僕が最後か。』
『朝ご飯だから、早く歯を磨いて顔を洗ってきなさい。』
『はぁ~い。』
僕は家の外に有る井戸の水で歯を磨いて、顔を洗いました。ぶる、ぶるっ、冷たくて気持ちいい。スッキリと目が覚めました。
『ご飯だ、ご飯だ、楽しいなぁ。』
お母さんに
『早く座りなさい。』
と注意されました。僕達4匹と、この家の3匹の全員で
『いただきま~す。』
僕は柔らかい草をモシャモシャモシャ。
『田舎の草は美味しいねぇ。』
『キュウリやトウモロコシも、とっても美味しいわ。』
お姉ちゃんはコリコリ、コリコリ。お父さんもお母さんも大満足。
『こんなに美味しい食事は久しぶりね。』
『そうだね。』