イスラエルを訪問中の安倍晋三首相は19日、第2次世界大戦中のナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺の記録を収めた国立ホロコースト記念館「ヤド・バシェム」を訪れ、視察後に「世界の平和と安定に、より積極的に貢献する」と決意を語った。▼4面=首相スピーチ全文

 

 戦後70年の節目となる今年、首相は新たな首相談話を発表する考えを示している。年初の海外訪問先から世界に向けて平和へのメッセージを打ち出すことで、首相談話では戦後日本の歩みに焦点を当てる姿勢をにじませたものとみられる。

 首相は同日、昭恵夫人と共に1時間余りかけて記念館を見学。終了後に記者団の前でスピーチを行い、「特定の民族を差別し、憎悪の対象とすることが、人間をどれほど残酷にするのかを学ぶことができた」と述べた。

 また戦時中、外交官として多くのユダヤ人の命を救った杉原千畝(ちうね)氏の功績を取り上げ、「差別と戦争のない世界、人権の守られる世界の実現に向け、働き続けなければならない」と強調。今年がアウシュビッツ強制収容所の解放70年でもあるとして、「このような悲劇を二度と繰り返させない」と表明した。

 首相は17日、エジプト・カイロで行った中東地域に向けた政策スピーチでも「日本は培った経験、能力を世界の安定に進んで捧げる」と語り、政権として掲げる「積極的平和主義」を訴えていた。(エルサレム=久木良太)

 

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http://www.asahi.com/articles/ASH1M5JHSH1MUTFK00L.htmlより引用

安倍晋三首相が19日、訪問先のイスラエルの国立ホロコースト記念館「ヤド・バシェム」で行ったスピーチの全文は次の通り。

 ユダヤの人々がくぐった苦難を、全人類の遺産として残そうとする皆様の努力に、心からなる敬意を抱きます。深い悲しみを乗り越え、イスラエルの建国に尽くした人たちを前に、厳かな気持ちになりました。

 特定の民族を差別し、憎悪の対象とすることが、人間をどれほど残酷にするのか、そのことを学ぶことができました。昨年3月、アムステルダムにおいてアンネ・フランクの家を訪ねましたが、本日、決意を新たにいたしました。

 ハショア・レオラム・ロー・オッド(※ヘブライ語で「ホロコーストを二度と繰り返さない」の意味)。ホロコーストを、二度と繰り返してはならぬ。

 私たちの先人には、杉原千畝がいます。彼のビザで日本に向かったユダヤ難民を助けた人々も、少なからずいました。彼らの勇気に、私たちは倣いたいと思います。

 ヤド・バシェムに灯(とも)る「永劫(えいごう)の火」を導きのともしびとして、差別と戦争のない世界、人権の守られる世界の実現に向け、働き続けなければなりません。日本としても、人々の人権を守り、平和な暮らしを守るため、世界の平和と安定に、より積極的に貢献していく決意であります。

 先の大戦終結から70年、そしてアウシュビッツ解放以来70年でもある本年、このような悲劇を二度と繰り返させないとの決意を表明します。

 ありがとうございました。トダ・ラバー(※ヘブライ語で「ありがとうございました」の意味)。(エルサレム=久木良太)