キネマ旬報ベスト・テン 1位は「この世界の片隅に」 | NHKニュース
https://bh.pid.nhk.or.jp/pidh07/ProgramIntro/Show.do?pkey=001-20170112-21-27749
放送予定
クローズアップ現代+「“この世界の片隅に”時代を超える平和への祈り」
チャンネル[総合]
2017年1月12日(木) 午後10:00~午後10:25(25分)
番組内容
異例のヒットを続けているアニメ映画「この世界の片隅に」。制作にあたって7千人の人々から、クラウドファンディングを通じ資金が寄せられた。映画に込められた思いとは。
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ビジネス特集 「この世界の片隅に」支えたネット出資
12月19日 18時13分
63館が200館以上に
アニメ映画「この世界の片隅に」は、広島市出身の漫画家こうの史代さんの漫画が原作で、片渕須直監督が6年をかけて製作しました。太平洋戦争末期、広島市で育った18歳の主人公の女性が結婚を機に軍港の街、呉で新しい暮らしをスタートするところから始まります。
幾度となく激しい空襲に襲われ、次第に生活が厳しくなっても、ひたむきに生きる姿がさまざまな世代から共感を集め、11月の公開開始から1か月間の観客動員数はおよそ44万人に上りました。上映される映画館も公開当初の63館からのべ200館以上にまで増えることが決まっています。
舞台となった広島県呉市にある映画館には東京などから熱心なファンが訪れているほか、映画ゆかりの場所をめぐるツアーも始まっています。
エンドロールに“名前”
このアニメ映画。本編のエンドロールには、多くの名前がスクリーンに映し出されます。その数は2095人。これは、映画のために製作資金を出資した“一般市民”の名前です。
映画の内容が戦時下の庶民の日常を淡々と描いて派手さもないことから、当初は映画としてはヒットしないという評価が多く、製作資金の調達は難航しました。そこで利用したのが、インターネットを通じて一般の人たちから小口の資金を集める「クラウドファンディング」という仕組みでした。
映画の予告編を作る費用として2015年3月から2000万円を目標に資金を募ったところ、わずか10日間で目標に達し、最終的には2か月余りの間に3374人から3900万円以上が集まりました。平均すると1人当たり1万1000円余り。原作の漫画のファンのほか、片渕監督のファンなども加わり、インターネットなどで映画化を応援したいという動きが広がりました。
この映画を支援しようと地元の呉市の人たちなどで結成されたグループの代表、大年健二さんは「地元が舞台となっている漫画の映画化ということで、親近感を感じた。自分たちの夢を託そうという気持ちを持った」と話しています。
結果的に、「クラウドファンディング」の仕組みを使って、映画の資金を調達した額としては歴代1位となりました。こうして集めた資金を使って5分間の予告編を製作。それがきっかけとなって大口のスポンサーによる出資も決まり、本編の製作にこぎ着けたということです。
片渕監督は「クラウドファンディングを通して、この映画を作るべきだと認めてくれたのがありがたかった」と話しています。
主人公から絵はがきも
今回のクラウドファンディングでは、多くの人たちから資金を集めるための工夫も凝らされています。資金を提供した人に対する「お返し」、いわば“配当”です。資金を提供した人は金額ごとに6つのコースが選べるようになっていて、それぞれ「お返し」が用意されました。
1万800円以上を出資した人は映画本編のエンドロールに自分の名前を載せることができるようにしました。半数以上の人がこのコースを選んだということです。映画製作というと製作会社が行うイメージが強いですが、個人であっても映画づくりに参加している感覚を味わえるのが人気の理由かもしれません。
また、映画の主人公「すず」から季節ごとの絵はがきが映画の舞台となった呉市の郵便局のスタンプが押されて自宅に届くといったユニークな「お返し」も人気を集めました。
こうした取り組みの効果は、資金調達以外の面にもあらわれました。資金を出した人、一人一人が、その後もソーシャルメディアなどを通じて映画を口コミで宣伝し、みずから映画の応援役となってPRしていったのです。
クラウドファンディングのサイトを運営しているサイバーエージェント・クラウドファンディングの中山亮太郎社長は、「映画を作る前に、それを見たいかどうか一般の人の反応を見ることができる点も特徴で、映画業界でさらに同様の動きは出てくると見ている」と話しています。
一般的にクラウドファンディングは、対象のプロジェクトがどうなったのかわかりにくいと言われることもあります。自分が出したお金がどのように使われているか。“出資者”が、そのプロジェクトとつながり続けることも大切です。
インターネットを使って個人も参加できる新しい映画製作の試み。今までになかった形の映画づくりの手法として広まっていくのか注目されます。
- 広島放送局
- 野中夕加 記者
- 平成22年入局
松江局を経て
現在 広島局で経済を担当