ひとつの配役、3つの顔・・・どんなモーツァルトに会ってみようか
[ミュージカル『モーツァルト!』トリプルキャスティング公演 3回を観る]
パク・ウンテ - 苦悩する知識人の姿、清らかな音色で見せる
パク・ヒョシン - 1幕では茶目っ気あふれる少年・・・2幕では深みのある声で訴える
イム・テギョン - とぼけたモーツァルト、さっぱりした唱法で消化
世宗文化会館大劇場で去る14日に開幕した オーストラリア産ミュージカル『モーツァルト!』という独特な作品だ。
作品が語るのはロマンスもクラシック音楽でもない、主人公の自我分裂という難しいテーマだ。
それでも2010年の初演以来 国内で根強い愛を受けている。
新たな演出家 エイドリアン・オズモンドが投入された今回の公演は ナンバー(挿入曲)を大幅に変化させて
主人公の内的葛藤をより浮き彫りにした。
配役を消化するのがはるかに難しくなったという話だ。
今年のモーツァルト役にトリプルキャスティングされたミュージカル俳優イム・テギョン(41)、パク・ウンテ(33)と
歌手パク・ヒョシン(33)の公演3回分を去る17~18日に全部見た。
制作会社EMKの前の作品『太陽王』とは異なり3名すべてが安定的な歌唱力を誇示し‘悲運の天才’モーツァルトを演じたが、
スタイルには相当な違いがあった。
パク・ヒョシンは‘天真爛漫な少年モーツァルト’だった。1幕では溌剌として茶目っ気あふれる演技を見せ、
2幕は挫折が深いほど真っ白な魂が受ける傷がいっそう深く苦しく見えた。
感覚的で耳から離れないような声で「なぜ私を愛してくれなかったのか?」と叫んで父レオポルドに訴える時 この痛みは最高潮に達した。
パク・ウンテが見せた姿は‘苦悩する知識人モーツァルト’だった。清らかで澄んだ音色を見せながらも
心から絶叫するような声で自分の芸術世界が傷つく苦しみを訴えた。
1幕の最終曲“私の運命を避けたい”で「私は誰の奴隷でもない・・・私は自由だ」と叫ぶ時は自意識の悟りが舞台の外にはじけ出すようだった。
3名の中で最年長のイム・テギョンは‘あらゆる苦労を経験した老練なモーツァルト’を見せた。
サイコロ賭博をする初めての場面からおどけたりとぼけたりし、2幕でコンスタンチェ見せるデュエットではドラマティックな表現力を通じて
歌を台詞の一部のように自然に消化した。
劇の後半 大主教との葛藤が絶頂に達する場面では 自分の道を歩こうとする意志をさっぱりした唱法で巧みに伝えた。
ウィーンに行けというヴァルトシュテッテン男爵夫人の勧誘を受け入れる姿では微妙な違いが見えた。
パク・ヒョシンは故郷ザルツブルグが嫌いで離れるように見え、パク・ウンテには新しい運命を開拓しようという決意が感じられる。
イム・テギョンは‘すでに行くべきだがったのに・・・’と舌打ちするような演技をした。
実際のモーツァルトなら3通りの感情をすべて感じるようなものだ。