「男がありとあらゆる理屈を
並べても、女の一滴の涙には
かなわない。」
ヴォルテールにそう教えられ
るまでもなく、
涙の前ではなすすべもない。
悲しみ、苦しみ、絶望から流れ
出す涙だけではなく、
彼女たちは、喜びという涙の
源泉も隠しもっているから
手に負えない。
もし男にこれに対抗できる
武器があるとするならば、
ひとつはその涙を記憶する
ということかもしれない。
例えば絵画だ。
筆を運びながら、無心になれ
るほど、
女の感情に囚われることなく
客観という世界で自由に心を
開放することができるはずだ。
しかし涙には色がない。
しかも涙はすぐに乾く。
涙を絵に留めるには、熟練と
技術が必要だ。
それも人生においての。