「あなたにつくってあげたい、
と結婚した。
いまは、その人がつくって
くれる」。
さくさくと小気味のよい
包丁の音。
あったかい湯気。ほのか
なだしの香り。
この人と暮らして本当に
よかったとつくづく思う。
うちの夫は料理がとても
上手だ。
わたしよりも台所に立つ
のが好きかもしれない。
男が料理をすると食材に
お金をかけ過ぎると、
よく言われるけれど、
うちの夫は違う。
店先で値ごろの素材を見
ると献立が思い浮かぶら
しい。
主夫になるのもいいかも、
と冗談まじりに言う。
でも、財布のひもを握られ
るのはいやだから、
ふたりで料理をすること
にしている。