私だってあなたが好き
だった。
あなたが言う隙を与え
なかっただけで。
そんなこともあるよ。
私だってあなたが好き
だった。
あなたが言う隙を与え
なかっただけで。
そんなこともあるよ。
なかなか東京に来られない
母に。年に2回、帰省の時
くらい、田舎じゃ食べられ
ないような、おいしくて
シャレたものをおみやげ
にしたい。
東京駅に向かって電車の
なかで、いつもそんなこと
を思います。去年の暮れは、
雑誌にもよく出ている人気
のお店のクッキー。その前
は、老舗のおまんじゅうだ
ったけ。
あれこれ送っても、結局お
おげさに喜んじゃうところ
が、すこしだけ残念ではあ
るけれど。
玄関先で「まあ、ありがとう。
長かったから疲れたでしょ」と、
いつも決まって笑顔で言う母に。
この夏は、なにを買っていこう
かな。
「太陽からのノック」
雨上がりの晴れた日に、
トントン、と家のドアを
叩く音がした。
あまりに小さな音だった
ので気のせいかな、
とコーヒーに手をのばすと、
またトトン、と音がする。
ドアを開けると、
さあっと瑞々しい風が
入り込んできた。
けれど、誰の姿も見あた
らない。
よく見ると家のそばの木が
すいぶん成長しているこ
とに気がついた。
木は大きく枝を伸ばし、
風が吹くたび家のかべや
ドアを小突く。
コツ、トン。
枝先には果実の青いふく
らみが
しっかりと実をむすび、
紅く熟すときを待ちわび
るように、
きらきらとゆれていた。
陽と水を浴びながら。
※追記
読み終えた余韻から、
コーヒー豆の雰囲気が
浮かぶような物語をつくる。
コーヒーはあくまでも脇役
である。だけど、とても
いい相棒である。
今日のコーヒーがそんな一杯
でありますように・・・・。
こばれ落ちる涙を止めよ
うともせずに、
私はただ泣いていた。
それはたいせつなものを
失ってしまった悲しみの
涙ではなきく、別れてしま
った恋人への感謝の涙だった。
ときどき涙は暴力になる。
泣いたら彼を困らせるだけ。
これでふたりが終わってしまう
なんて信じられなかったけれど。
私はじっとこらえていた。
それは私のプライドだし、彼に
対する最後の思いやりだった。
陽だまりのような言葉を、
いっぱい知っている。
あなたが
まぶしい
本当は
現実なのに・・・
夢の中のようにかなしい
あした
あなたをさらえたらいいのに
幸せは、名もない一日に
つまっています。
そんなさりげない一日に
も、心を澄ませば
感じる幸せが、いっぱい
つまっています。
小鳥の声でめざめる幸せ。
洗いたてのシャツに
腕を通す幸せ。炊きたて
のご飯を 噛みしめる
幸せ。
雲ひとつない青空を
仰ぎ見る幸せ。「行っ
てらっしゃい」と家族
に送り出される幸せ。
誕生日や、結婚記念日や、
クリスマスも大切だけれ
ど、人生の大半を占める、
そんなふつうの、
一日一日がどれほど大切
か。
ほんとうに大切なのは、
人の、なんでもない一日、
一日一日をていねいに
見つめ、愛していないと
生まれて来ない笑顔。
そんな想いをつきつめ、
余分な言葉を
削ぎ落とした結果、最後
に「今日」と「愛する」
という二つの単語が残った。